請を受け、海上保安部と救助方針について協議した結果、現場は水深が浅く救助船が接近できない状況を考慮し、ゴムボートを使用することに決定、副所長(元木進)所有船第3興隆丸を救助船として、副所長以下ベテラン5名とともに出動し、所長指揮のもと、海陸一体となって遭難者の救助にあたった。
出動時は、強風波浪注意報が発令され、西北西の風24メートル、波高2〜4メートルの荒天のため、救助船は現場付近でゴムボートを降し、乗り込んだ所員は風上からロープをつけて遭難船に向い、 5名の乗組員を収容し、合図とともに救助船第3興隆丸側からロープを引き寄せ船内に引き上げ無事救助を完了した。
○福島県支部請戸数難所
平成8年5月10日午前9月30分頃、福島県双葉郡請戸沖15キロ付近で、漁船開洋丸と海祥丸はメロード漁の揚網作業をはじめたが、開洋丸は左舷側から高波を受けて転覆し、網揚作業中の3名が海中に投げ出された。当時の気象は、南西の風14〜15メートル、波高2〜3メートルであった。
投げ出された3名のうち、船長は咄嗟に転覆した開洋丸の船底に這い上がったが、他の2名は防水衣等厚着のため自由がきかず、加えて風浪のため泳ぐことができず溺れはじめた。近くで操業していた第8幸洋丸(船長元救助員今井之彦、救助員今井孝二)が転覆を目撃し、僚船第2宝精丸(救助員佐山正則)とともに救助活動を行なったが、強風と高波のため遭難者に近づけないため、救命浮環にロープを付けて数回繰り返し流した結果、やっとその浮環に捕まったので、ロープを体に巻き付かせ、そのロープを引き寄せて第8幸洋丸船上に引き上げた。
そのうち1人は呼吸、脈拍とも停止状態であったので、水を吐かせ、人工呼吸等を施しながら請戸港に向け全速力で航走10時39分入港し、待機していた救急車に引き渡し、病院に収容されたが、残念ながら1名は蘇生せず病院で死亡が確認された。
なお、船底に這い上っていた海祥丸乗組員は、第2宝精丸がロープ付救命浮環を流し無事救助した。
○茨城県支部平潟救難所
平成8年10月28日午前9時頃、福島県塩屋岬沖で曳網漁をしていたプレジャー船信夫丸が魚を取り込もうとした時、パランスを崩して海中に転落、船から離れてしまい、水面に漂いながら潮に流されていった。同日朝から塩屋碕沖で鰹吊りに従事していた漁船政勝丸(救助員鈴木忠勝ほか2名)は、漁場を移動中波間に見え隠れする漂流物を認め、確認のため接近したところ男性が大の字状態で漂流しているのを確認した。
遭難者は声をかけても全く応答なく、接近して身体に触ったが反応はなく、意識不明の状態なので遭難者を船上に引き上げ、再度チェックしたところ、呼吸は停止状態、脈拍もほとんど感じない状態であったので、心肺蘇生法による応急手当を交替で実施したところ息を吹きかえしたので、引き続き耳元で呼びかけを続けながら小名浜港に向け全速航走し、無線で救急車の手配をし、午前10時45分入港後待機中の救急