日本財団 図書館


ため、複数の後見人・補佐人を選任することはできない。

新法においては、高齢者・知的障害者・精神障害者等の多様なニーズに応える保護の方策として、後見体制についての選択肢を広げ、複数の成年後見人が後見事務を協同。分担して遂行することを可能とするために、複数の成年後見人を選任することを認めるべきであるとするのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。

イ 法人後見人―――現行法の下では、後見人・補佐人は「一人」でなければならないとされているため、法人を後見人・補佐人に選任することの可否については、消極に解する見解が有力である。

新法においては、高齢者・知的障害者・精神障害者等の多様なニーズに応える保護の方策として、後見体制についての選択肢を広げ、社会福祉事業等を行う法人が後見事務を遂行することを可能とするために、何らかの適切な規定形式により、法人の成年後見人を選任することができる旨の明文の規定を置くべきであるとするのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。

ウ 法定後見人制度の見直し―――現行法の下では、配偶者のある禁治産者・準禁治産者については、必ず配偶者が後見人・補佐人になるものとされているが、特に高齢者の場合には、配偶者も相当高齢に達していることが多く、必ずしも配偶者が常に適任とは限らないことから、この法定後見人・法定補佐人の制度を廃止し、家庭裁判所が事案に応じて最も適任と認められる者を成年後見人に選任することができる(真に適任と認められる場合には、配偶者を成年後見人にすることもできる)ものとするべきであるとするのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。

エ 身上看護―――現行法の下では、禁治産者の後見人は本人に対して「療養看護義務」を負うとされている。

新法においては、財産管理(契約の締結、費用の支払等)と身上看護(医療、住居の確保、施設の入過所等、介護・生活維持、教育・リハビリ等)の密接不可分な関連性を考慮して、成年後見人は、その権限(代理権・財産管理権等)を行使するに当たって、本人の身上に配慮する義務がある旨の一般的な規定を設ける(個別の事項については、当該規定の解釈で読み込む)べきであるとするのが、本研究会の多数意見であった。

また、本人の居住用不動産の売却、賃貸、賃貸借契約の解除等のように、本人の居住を困難にするおそれのある行為を本人に代わってするときは、成年後見人は、家庭裁判所又は後見監督人の許可を得なければならない旨の規定を設けるべきであるというのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。

オ 本人の希望の尊重―――本人の自己決定の尊重という理念にそった後見事務の遂行を担保するために、外国の立法例にならって、成年後見人は後見事務の遂行に際して本人の希望を尊重しなければならないという趣旨の理念的な規定を設けるのが相当であるとするのが、本研究会の多数意見であった。

カ 後見監督人制度―――後見人に対する監督機構の充実の観点から、後見監督人制度を利用しやすく実効的なものとするための方策として、?後見事務の適正を期するために必要があるときは、家庭裁判所が職権で後見監督人を選任することができるものとするとともに、?家庭裁判所が本人の財産の中から後見監督人に相当な報酬を与えることができる旨の規定を設けるのが相当であるとするのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION