調節を行おうとするものであり、具体的な適用場面においては、各人ごとの個別の状況に応じた保護措置を可能とするものであること、(b)判断能力の程度の高い類型(前記?)においては、保護の内容・範囲を全面的に当事者の自己決定・選択にゆだね、判断能力の程度の低い類型(前記?、?)においては、本人保護の政策的観点から、保護の内容・範囲をある程度定型的に法定し、当事者の自己決定・選択にゆだねる部分と併存させており、判断能力のレベルに応じて当事者の判断と責任にゆだねる範囲を調節していること、の2点に留意する必要がある。
イ 戸籍への記載―――戸籍への記載については、国民に心理的抵抗感があり、それが制度の利用の障害となっているとの意見があることから、このような意見に配慮して戸籍に代わる別の公示方法を検討すべきであるとするのが本研究会の多数意見であったが、その具体的な方法等についてはなお検討を要するとされた。
ウ 資格制限―――現行の禁治産者・準禁治産者に関する各種法令の資格制限に関しても、制度の利用の障害となっている国民の心理的抵抗感を考慮して、関係省庁に対し、前述の後見・保佐類型についてその範囲を縮減する方向での検討を求めるべきであるとする意見が出された。(また、新設の補助類型については、現行法の下で資格制限を付されていない者(現行の準禁治産者より判断能力の高い者)を対象とするものであるので、ノーマライゼーションの理念等の観点から、関係省庁に対し、資格制限を付さないよう求めるべきであるとするのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。
エ 福祉事務所の長等の申立権迅速且つ適切に要保護者に対する保護を提供するために、福祉事務所の長等に申立権を付与すべきであるとするのが、本研究会の多数意見であった。
(注) 制度の対象者については、次のような検討がされた。
? 浪費者―――現行法は浪費者を準禁治産宣告の対象としているが、行為能力の制限は判断能力の不充分な者に対する必要最小限の範囲に限定するという立法政策等の観点から、浪費者を一律に制度の対象とするのではなく、制度の対象を判断能力の不充分な浪費者に限定すべきであるとするのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。
? 身体障害者―――昭和54年の民法改正により、「聾者」「唖者」「盲者」を準禁治産宣告の対象から除外する改正がされた経緯(身体障害者の差別・取引上の不利益につながるとして、視聴覚・言語機能障害者自身が規定の削除を求める請願・運動等を行い、改正に至った)、前記?の立法政策等を考慮して、身体障害者を一律に制度の対象とするするのではなく、制度の対象を身体障害のために判断能力の不充分な者に限定すべきであるとするのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。
最も、重度の身体障害等により、意志疎通が著しく困難であり、適切な法律行為(表示行為)をすることができない者については、判断能力の不充分な者と同程度に保護を要する者として、制度の対象に含めるべきであるとする意見も出された(この点については、今後の法制審議会における議論や身体障害者団体等に対する意見照会の結果等を踏まえて、適切に対処していく必要があると思われる)。
4 後見・保佐制度の整備の在り方
後見制度の充実を図るため、次のア〜カの各論点等について検討がされた(以下、新法における後見人・保佐人・補助人(仮称)を総称して「成年後見人」という)。
ア 複数後見人―――現行法の下では、後見人・保佐人は「一人」でなければならないとされている