2. 成年後見制度に関する検討の経緯・予定
(1) 成年後見制度に関する検討の経緯
前期1の背景を踏まえて、法務大臣の諮問機関である法制審議会の民法部会は、平成7年6月に、次期の検討課題として成年後見問題を取り上げる旨を決定するとともに、その審議の基礎となる論点整理・調査研究を行うことを目的として、法務省民事局内に研究会を設置することを決定した。
この決定に基づいて、平成7年7月、民事局内に「成年後見問題研究会」が設置され、同研究会は、民法学者、弁護士及び裁判官の他、最高裁・法務省の担当者を構成員とし、厚生省の担当者をオブザーバーとして、約2年間にわたって基礎的な論点整理・調査研究(関係諸団体からの意見聴取、諸外国における立法の実態調査等)を行い、今般、その検討結果を取りまとめた報告書を作成した。法務省民事局は、平成9年9月30日、法制審議会民法部会において、同研究会の調査研究結果を報告した上で、同報告書を公表した。
(2) 法制審議会における今後の審議日程
法制審議会民法部会は、同日、その報告を受けて、財産法小委員会・身分法小委員会の各委員・幹事の一部の他、福祉関係者を含む一般有識者の参加を得た「成年後見小委員会」を新たに設置し、平成9年10月以後、同小委員会において成年後見制度の見直しに関する本格的な審議を行っているところである。
法制審議会民法部会では、成年後見問題の国民生活との密接な関わりを重視して、国民各層の意見を幅広く反映させるため、平成10年春頃には要綱試案を公表して関係各界に対する意見照会を行った上で、平成11年の通常国会に成年後見制度の整備のための民法改正法案等を提出することができるよう、審議・検討を進めていく予定である。
3. 成年後見問題研究会報告書の概要
成年後見問題研究会報告書は、前述の通り、法制審議会における審議の基礎となる論点整理・調査研究の結果をまとめたものである。成年後見制度の見直しの具体的な方向性は、同報告書の中で検討課題とされた各論点について、関係各界に対する意見照会の結果等を踏まえて、法制審議会における今後の審議・検討を通じて決定されていく予定である。
以下、主な論点を概観する。
(1) 基本的な理念
成年後見制度の見直しに当たっては、現行法制の理念である「本人の保護」と新しい理念である「自己決定(自立)の尊重」(残存能力の活用、ノーマライゼーション等の理念を含む)との調和を旨として、柔軟且つ弾力的な利用しやすい制度を設計するよう努めるべきであるとするのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。
(2) 立法の形式
今回の立法の形式に関しては、以下の理由から、基本的には民法の改正によるとするのが、本研究会のほぼ一致した意見であった。
? 成年後見法制を整備するに当たって予定されている法改正の内容は、広く判断能力の不充分な自然人一般を適用対象とし、その行為能力及びそれを補完する後見・保佐等に関する規定を整備しようとするものであって、その適用範囲は一般的であり、規定の内容も一般私法法規の性質を有する。
? 改正の対象となる行為能力、後見・保佐等の制度は民法典の中に規定されており、今回の改正