日本財団 図書館


肢体不自由者の人生設計

 

人口構造の変化がもたらす社会、経済の変化は21世紀にはどのような姿をみせているのでしょうか。

ここまで述べてきたように、21世紀のわが国のイメージとしては、まわりを見回すと4人に1人が65歳以上で、逆に15歳未満の子どもは7〜8人に1人という高齢化社会となり、男女を問わず高齢の労働者が増え、特に女性では少なくとも現在と同程度の40%強の女性が働いているもののその年齢構成は中年および高年齢者層が非常に増え、65歳以上の女性の労働人口は現在の6割増から2倍近くになっていることでしょう。

また、人口の移動においても核都市への集中傾向が続き、過疎化している地域との格差が一層進むことが見込まれています。

社会保障制度では、年金、医療、介護に代表されるように高齢者や障害者にかかる社会保障給付費が増大し、これを主に支える若年世代が減少することにより世代間扶養のバランスが崩れて本格的な年金の受給年齢が段階的な部分年金へと切り替わっていきます。

障害者施策の体系や実施体制が見直され、新長期計画と障害者プランの策定に伴い保健、医療、福祉をはじめ、介護等のサービス、バリアフリー化、QOLの向上等、各種施策の連携やサービスの提供体制が概ね出そろってきているといわれる現在、各種制度の恩恵を享受するばかりでなく、障害者も社会を構成する一員として、その能力に応じた負担をすることも必要となってきています。

障害者が地域で共に生活するためには、ノーマライゼーションの理念のもと、障害のない者と同等に生活し、活動する社会を構築していくことが必要ですが、それはすなわち障害者も各々のライフステージの各段階で自分に合った生活設計を立て、自助努力を行うことがこれからの21世紀に向けて大変重要となっていきます。

それには、父母当人の人生設計と障害をもつ子ども以外の兄弟姉妹の生活設計を総合的に考え、子どもや家族のための生活設計を日頃から真剣に考えておくことが必要であり、障害をもつ子どもにも安定した生活設計と人生計画を立てていってあげることが求められてきています。

人は誰もが大なり小なり将来に対する不安を抱えて生きています。

少しでもその不安を解消していくために今やらなくてはならないことは、まず自分たちの将来を見通すことと、それに対する準備することに他なりません。

それが「生活設計」なのです。

ことに経済的な部分に関しては、この計画的な準備によってかなりの不安を解消することが可能となります。

ここでいう「生活設計」の最終的な目的は、あくまでもその計画(=目標)を実現するための手段を検討し、それを実行していくことにあるのだということをまず頭に入れておいてください。

日本という貨幣経済の国で暮らしている限り、お金と無縁の人生はありません。結婚、出産、育児、教育、住宅取得、老後など、人生の節目にはいずれもそれなりの資金が必要になります。

私たちの日常の経済活動は、基本的にはこうした資金を準備するために(日々の生活はもちろんですが…)行われているのであり、これをいかに計画的に、効率的にできるががその手段のポイントとなるわけです。

「生活設計」というのは、家族の将来というテーマについて、将来の計画に基づく収支を予測して、お金がうまく回っていくかどうかを見てみましょうということです。うまく回らないのであれば、何が問題で、どうすればよいのかを探るわけです。

肢体不自由者の生活設計を立てるには、将来の生活の安定を図ることを第一目的とした手順として、下記のように大きく5つのステップに分けることができます。

? 子ども(障害児・者)の生活設計を立てる

? 過不足の見積り

? 不足額の手当の方法を考える

? 家族全体の生活設計を立てる

? 子どもの財産、親からの移転する財産の運用

このように、経済的にも心理的にも将来に対する不安を軽減し、ゆとりを持って安心した生活を送れるために、各々の目標に合わせた「総合的な生活設計」を立てていくにはどのように取り組んでいくべきか、また、どのような制度があるのか、それらを活用していくためにはどうすればよいのか、それらの点を押さえていくことが最も重要なポイントとなるのです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION