障害者と家族をとりまく環境
高齢化と少子化による社会環境の変容により、肢体不自由児・者とその家族にもさまざまな影響が生じてきています。
たしかに、ここ数年における障害者福祉の進歩には目をみはるものがあります。障害者に対する施策ではこれまで、「国連・障害者の十年」を契機に「障害者対策に関する長期計画」による重点施策を策定し、引き続き「障害者対策に関する新長期計画」の策定とともに、「障害者基本法」が施行されました。
さらに、新長期計画の推進を図りノーマライゼーションの実現を目指すべく「障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年戦略」を策定するとともに、平成8年('96)7月には障害者保健福祉施策を一元化するべく厚生省大臣官房に障害保健福祉部が創設されました。
しかしこれらの施策は序章についたばかりであり、これらの施策を地域の実情に応じて、さらに地域住民たる障害者のライフステージに対応して、各種施策を連携させながら具現化していかなければなりません。
身体障害者の二ーズについて、平成3年('91)に実施された「身体障害児・着実態調査」によると、身体障害者では「現在、特に必要な福祉サービス」として、「年金などの所得保障の充実」が40.7%で最も多く、他の要望を大きく離しています。
一方、障害児の二ーズでも「専門的な機能回復訓練の実施」を望む40.5%に続き、「手当など経済的援助の充実」が35.9%を占めています。
また、「日常生活動作の介助を必要とするもの」についての主な介助者は、障害者では、配偶者等の「家族」が54.7%〜59.3%を占めており、家族の負担が多くなっています。
障害児では「親」が89.6%〜93.1%であり、二ーズ調査の「家族が休養できる体制の充実」の17.9%にみられるように、家族の肉体的、精神的負担が大きくなっています。
この実態調査については、前回調査から5年ぶりに平成8年('96)11月に実施されましたが、市町村障害者計画と障害者プランの策定等による、これらの施策の認識と利用度、障害児・者の二ーズを把握するものとして、その調査結果が待たれるものとなっています。
さらに、障害の有無にかかわらず全国の20歳以上の者を抽出して、障害のある人に関する意識調査として行なわれた、平成4年('92)の総理府による「障害者に関する世論調査」によると、国や地方公共団体に対する要望として「雇用・就労の場の確保」の40.8%に続き、「年金や手当の充実」が35.2%占め、障害者施策に対する国民の意識も社会保障制度の充実が必要不可欠であるという認識に立っていることがうかがえます。
また、平成5年('93)に本会が行った「レスパイトサービスに関する基礎調査(肢体不自由児・者の家族および本人を対象として)」における生活状況や介護状況についてみると、障害の重度重複化の傾向と家族に対する負担が高くなっています。
この調査における有効回答数の年令別構成をみると、19〜30歳の青年期が38.5%を占めており次に0〜15歳の29.7%、19〜30歳の15.3%となっており、家族構成では、祖父母と同居している多世代同居が26.3%、本人と家族だけの21.0%を含む核家族世帯が72.7%なっています。
この家族構成には回答者の年令別構成による影響もありますが、三世代同居による障害者本人に対する祖父母の介助等の支援を得られるという、家族での扶養機能がある反面、一部では祖父母に対する介護等が必要となるケースも生じてきており、父母、特に母親の負担がさらに大きなものとなってきています。