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第2章

Q&Aでみる肢体不自由者の人生設計

 

「肢体不自由者の生活設計と高齢化に関する調査研究」セミナー

 

さて、ここまで述べてきたように長寿化の進展や出生率の低下に加え、長引く不況や財政構造改革等により、障害者と家族を取り巻く環境や経済状況にもさまざまな影響が現れてきています。

さらに、障害者福祉施策の指針となる市町村障害者計画の策定状況も、対象市町村中2割にも達しておらず、都道府県によってその策定状況に大きな差が生じてきており、地域格差も広がってきているのが現状です。

地方分権、社会保障制度全体の再構築の動きとともに、障害者施策の総合的な支援体制と実施体系が見直されるなど、障害者福祉も新たな潮流に乗って急速に進んできています。

障害者が永くその地域で共に生活していくためには、ノーマライゼーションの理念のもと障害のない者と同等に生活し、活動していける社会を構築していくことが最も重要なことです。

特に、高齢化が進むなか介助する親の負担も重くなってきており、親亡き後にも障害者が住み慣れた地域の中で共に生活していくためには地域の人々の理解と支援を得ることと同時に、障害者と家族も各々のライフステージの各段階で自分にあった生活設計を立て、自助努力を行いながら良質な人生設計を思い描いていくことが大切であり、生活設計を立てることにより日々に生活にメリハリが生まれ、生きがいと夢をもった生活が送れることにつながっていくのです。

しかし、障害者とその家族がより豊かで安定した生活設計を立てていくためには、さまざまな不安や課題を解消し、乗り越えていかなければなりません。障害者や家族が抱えている財や税に対する不安、各種の制度やサービスの把握、父母とともに障害者自身の高齢化と二次障害に対する対応など、少しでもその不安を解消していくために今やらなければならないことは、まず自分たちの将来を見通すこと、それに対する準備をすることに他なりません。

ことに経済的な部分に関しては、この計画的な準備によってかなりの不安が解消できます。

全肢連では昨年度より3年計画で「肢体不自由者の生活設計と高齢化に関する調査研究」事業として、来たるべき少子・高齢化社会における障害者と家族の将来というテーマとして研究を行っています。

初年度に当たる平成8年度は基礎調査として、肢体不自由者と家族がより豊かで安定した人生設計を立てていくための指針となるよう、来たるべき高齢化社会の姿を正確に把握し課題点を抽出するとともに、より良い生活設計を立てていくための取り組みについて、これまではともすればタブー視とされがちな障害者に対する生活のための財の形成と税に対する対策についても詳しく調査研究してきました。

第2次調査研究期間となる平成9年度の今年度は、初年度の基礎調査の検証と、これまでは具体策が乏しかった事例の収集、地域における課題点の抽出を目的とした研修会を全国4ヶ所において実施し、目まぐるしく進展する施策や制度、税や財に関する知識の普及を行ってきました。

心の壁、物の壁、制度の壁という3つの障壁を克服するためには、心理的、経済的にも将来に対する不安を軽減し、ゆとりをもった総合的な生活設計を立てていくことが重要なことですが、それには第一に父母が子供のための良質な生活設計を立てていくための専門的な知識を習得し研修することにより、さまざまなニーズや諸問題に対応できる相談員として育成していくことも求められてきています。

本章では4ヶ所で実施されたセミナーの模様と、各地域で寄せられた質問や事例をもとにQ&A方式で回答と具体例を記すことにします。

 

 

 

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