日本財団 図書館


また、社会保障給付費の部門別の推移をみると、年金制度の成熟化とともに高齢化が進展したため、年金の伸びが特に目立ち、昭和56年('81)に医療を抜いて社会保障給付費の中で最大の割合を占めるに至って以降、現在に至るまで社会保障給付費の過半を占めてきています。

さらに人口構成の高齢化によって、労働力の供給を示す労働力人口も頭打ちになってきます。

労働人口とは、実際に働いている人と働く意思をもっているにもかかわらず失業している人の合計であり、この労働力人口の人口に締める割合を労働力率とよんでおり、いわば労働参加率というべきものです。

これは男子では25〜59歳において高原状に90%を越える水準で高く、高齢者と若年者で低くなります。また女子ではやはり高齢者と若年者で低いのは同じですが、育児・出産の年齢期で谷状に低下します。

雇用をめぐる状況は厳しく、平成3年度('91)には2.1%であった完全失業率が、平成7年('95)中には3%を超える水準で推移しています。

労働力の高齢化とは、この労働力の低い高齢層へ人口のウエイトが移っていくいくことであり、国全体としての労働力率が低下する傾向にあります。職業別構成でも第一次産業である農業・漁業が大幅に減少し、第三次産業である事務・管理・技術系が大幅に増加してきました。

このことはすなわち、農漁村部での高齢化と過疎化、都市部への一極集中と若年層の労働人口の集中という、人口と産業の地域間格差とともに、その地域で再生産される自然増加率の側面と人が移動することによって増減する社会増加率として、人口の再生産率の格差が広がっていくことが見込まれています。また、自営業者等の減少と国民のサラリーマン化も進んでいます。

わが国の経済は、累次にわたる経済対策の効果もあり、個人消費や民間投資等の内需の拡大により昭和61年('86)秋から戦後2番目の長い景気拡大期を迎えました。しかし、それまでの反動としてのストック調整に加え、バブルの崩壊等の影響で、平成3年('91)春頃からは戦後2番目といわれる景気後退過程に入りました。

平成5年('93)秋には景気は底を打ち、その後は足踏みがみられた景気も平成8年('96)には緩やかながら回復の動きがみられるといわれていますが、中長期的にみて、かつてのような高度経済成長を望める環境にはなく、社会保障制度が経済成長の成果を享受する中で給付を拡大することは困難となってきています。

このように、人口の高齢化とかつてない少子化の急速な進行は、高齢化のスピードを加速させるだけでなく、将来の社会を担う若年世代の減少を招き、社会保障制度をはじめ、経済活力の維持・発展をも困難にする恐れがあり、社会、経済の在り方にも大きな影響を及ぼすものと予想されています。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION