(3)ホワイトアウト
見渡す限り白一色の氷原が全天雲に覆われた時、雪や霧で視界が悪くなると、上下、四周すべて白一色に包まれて、自機以外には全く判別出来るものがなく、パイロットは盲目状態になってしまう。自分の姿勢も飛行高度も水面の凹凸も、視界も判別出来ない。我々も軽いホワイトアウトに遭遇した。こんな時、水面の出ている所があったり、アザラシが居たり、青みがかった氷を見付けると、蘇生の思いをした。小型ヘリコプターはよく氷上に降りたが、ホワイトアウトでなくても表面の凹凸が見え難く、着陸して機が突然傾いて驚くことがあるが、予め木片等を落すと凹凸が判り、安全に着陸出来た。また、観測隊員が雪上車で大陸旅行中、ホワイトアウト現象で雪面の凹凸が判別出来なくなり、日中にも拘らず前進を中止した例もある。
(4)氷山、大利根水道
氷山は南緯50〜53度付近から見られたが、氷海の中にも多くの氷山があり、縦横数粁からほんの小さなものまで、高いのは50米近くまであったが、その形と場所は殆ど変わらなかったので、航法のよい目標となった。小氷山は砕いて採取し、宗谷の水不足を補った。
昭和基地から40海里前後のところに大利根水道と称する開水面があり、定着氷と流氷の接するところで、数海里に開いたり閉じたりしたが、大氷原中の大河の趣があり、よい目標となった。
(5)着氷現象
宗谷が南極地域行動中の気温は0〜-10度で、機体各部に着氷を起こし易い気温であり、霧に入った時など速やかに着氷を起こして飛行困難に陥るので、極地では最も注意すべきことであった。飛行中着氷して揚力を失い、氷原上に降りたものの再び飛び上がれず、氷上を滑走して帰船した例もあり、我々も着氷を経験した。
(6)地図、磁気偏差
南極観測を始めた当初、宗谷が使用した海図では大陸沿岸の地形は凹凸のない線でサッと描いたようなもので、水深もなく、全て宗谷の測量によって次第に正確になってきた。我々も沿岸地形の