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3. 同盟について最も重要なのはNATOと日米安保条約の将来である。

NATOについては、1989年以来の懸案が今年になって決着がつき、ヴィシグラード諸国のNATO加盟が決定した。

これによって、これら諸国が今後平和と繁栄を享受する安定した枠組が出来ることになり、ヨーロッパの東辺における歴史的に不安定な地域が安定化する事が期待される。しかも、それは、ロシア国内における親西欧民主勢力と、保守的、共産主義的、民族主義的勢力との間の力のバランスに影響を与える事なく実現された意味で成功であった。

今後は、更にこれをルーマニア、バルト三国に拡大するかどうかが最大の課題として残っている。それにはやはり同じようなプロセスが必要であろう。即ち時間をかけてあらゆる関係者との協議を重ね、これら諸国の加盟の意志と能力が疑いのないものであり、加盟後は自然な同盟国となる見通しが確実であり、また更に重要な事として、そうした大勢がすでに動かし難いものである事をロシアが認識するか、あるいは、あきらめるか、というプロセスである。今後ヨーロッパに永い平和が続くという見通しは、こうした時間のかかるプロセスを可能にさせるものであろう。

その間、まず防衛義務の無いEUの拡大を先にするというアプローチも場合によっては有益であろうが、それを限界とせず、将来のNATO加入の可能性をオープンにして置く事が必要である。

 

日米同盟については、アジアの情勢はヨーロッパと違って、長期的な安定の青写真を描く事が難かしい。

中国の将来、混乱を克服した後のロシア、統一後の朝鮮の動向には、幾多の未確定要素がある。ASEAN10が、日米豪との友好協力関係を前提とした独自路線を維持する事はほぼ予想し得るが、それも将来の米国のアジア政策、米中の力関係によって影響を受ける事となろう。

このようにアジアは独立変数の多い多次元方程式であるが、その中で数値の最も大きいのはその軍事力、経済力から言って日米同盟である。日米同盟が維持強化されれば、他の諸国それぞれの選択肢は局限されて来て、アジアの将来の展望はより明らかになる。逆に日米間の疎隔が生ずれば、アジアの将来は流動的となり予測不可能となる。今後のアジアの安定の鍵は日米同盟がいかに維持強化されるかにかかっていると言えよう。

以上

 

 

 

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