自衛権については何も書いてない。では、自衛権というのは、法律的に書いてないからないというものではないのです。我々は生存権をもっているのです。だから、自衛権をもっていない国家というのは定義上国家ではないのです。日本は国家である限り自衛権はある。自衛権の中には、個別的自衛権と集団的自衛権がある。これは当たり前の話なのです。
集団的自衛権が違憲だというのは、およそ国際法の初歩を知らない人の意見ではないか。論理的に物を考える能力が多少でもある人なら、当然合憲というだろうと私は思っています。
○田中 私は、やや悲観的な面があって、ですから、ご質問の趣旨が憲法9条の枠内でといったときの枠内でというのはどういう意味かと考え、もし現在の政府の行っている政府解釈を政府が変えないという中でどうかというご質問だとすれば、なかなか難しいと言わざるを得ないと思います。その憲法解釈からすれば私も、佐藤先生、岡崎大使とほとんど同じ意見です。
もう1つ、集団的自衛権もそうですけれども、あとは国際連合への協力といったときの憲法問題もあって、こちらもややあいまいのまま推移しているわけです。PKO法の見直しというのを行っていませんし、その後、国連の平和活動にどこまで参加するのかというところも詰めていませんから、この辺のところ、実態として政治が政府解釈を変える方向に動いていかないとすると、私は、日本の場合は、安全保障についてみると、日本は大分運がいい国ですから21世紀も運に頼ってお祈りをするということで、ほかの国、特にアメリカに大体何とか全部やってもらうということを願うということにならざるを得ないかなという感じがしています。
○モデレーター ありがとうございます。
それでは、きょうのシンポジウムはこれで閉会ということにいたしたいと思います。先ほど来ご議論を聞いていただきましたように、冷戦が終わり、これから安全保障の問題についてどのように考えたらいいのか、現実に世界情勢をどのように把握していったらいいのかという基本的な問題がある中において、先進民主主義諸国がどのようにそういう問題に対処していったらいいのか。それこそが先進民主主義諸国の役割ということになるのだと思います。副題にありますように、多元的な安全保障の共同体の問題、あるいは同盟との関係、これを新しい視点からもう一回見直し、その上において安全保障対策をしっかり固めていくという大問題を日本は現在抱えており、そういう際の考え方について、きょう、3人のパネリストの方々から非常に明快な説明を伺って、裨益する点が非常に多かったと思います。我々世界平和研究所が考えておりました今のような諸点について、このシンポジウムにおきまして、3人の専門家の方々からいただいた考え方、それがこの研究所の目的とします研究に非常に大きな材料を与えていただいたこと、そしてまた、参会の方々から積極的なご意見なども開陳されまして、このシンポジウムの内容が充実した形で終わることができましたことに対して、平和研のためにご支援いただき、またきょうご参加いただきました方々に対してお礼を申し上げたいと思います。佐藤さんは身内ですけれども、外部からおいでいただいた岡崎さん、田中さん、非常に内容の濃い議論を展開していただきまして我々は本当にありがたく思っております。どうもありがとうございました。
それでは、これをもって閉会いたします(拍手)。
――了――