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幾つかの点があると思うのですけれども、まず第1にしなければいけないのは、やはり国際連合を再活性化するということが必要だろうと思っています。冷戦終了直後の1990年代、湾岸戦争直後のブトロス・ガリ事務総長のときの国連は、ややユーフォリックであった。それから、ブトロス・ガリ事務総長が平和強制ということをかなり頻繁に言ったということは、それ自体は反省されなければいけませんけれども、特に現在のアメリカにみられるような国連軽視、国連無視というのは、やはり健全でないと思っています。

第2には、混沌国における国家再建への協力ということであります。国家が相対化されている時代に、国家を再建しろというのは何か変だということかもしれませんが、この混沌とした地域においては、まず秩序を再建しなければいけないと思っています。別に独裁者の誕生をあえて助ける必要は全くないし、恐らく独裁者はかえって秩序を乱すと思いますが、何としても秩序を与える協力をしなければいけない。

あとは、混沌圏周辺の地域、混沌としている地域の周辺の国家を支えるということが非常に重要だと思います。特にアフリカということでいえば、民主化と市場経済を定着させつつある南部アフリカ諸国への支援を充実させることによって、混沌圏が拡大するというのを防ぐことが重要だろうと思っています。

このような先進民主主義諸国の安全保障に対する役割にとって、どういう国が重要かというように考えてみると、決定的に重要なのはアメリカだろうと思っています。アメリカにいろいろな欠点があるのは間違いないにしても、アメリカの力、これは私がいう新中世的な意味での力も非常に強いし、近代的な軍事力といった意味でも強い。この2つの力を利用しないで、21世紀の世界をより平和にしていくことはできないと思っております。

西欧諸国もアメリカと同じように重要ですけれども、私は西欧諸国がアメリカと同じような役割を果たすということはやはり難しいと思います。これは日本についても言えて、その中で日本、西欧諸国、アメリカとの間で役割分担があるというのは当然であって、日本や西欧諸国が、アメリカのもっているような軍事力のパワーの遠方投入に積極的に関与する必要はないと思います。ただ、そうはいっても、第2圏域、第3圏域との対応において、先進民主主義諸国が一致団結するのであるという姿勢を維持していくということが非常に重要だろうと思っております。

申し上げたことで不十分なところもあったと思いますけれども、とりあえずこの辺で終わらせていただきます。

 

○モデレーター ありがとうございました。

田中さんが最近出された、新しい中世という非常に独創的な考え方のもとに、現在の世界情勢を3つの圏域に分けてお考えいただいて、大変おもしろい問題提起だったと思います。岡崎さんの議論と、これを一体どのようにかみ合わせて考えるのかという問題が当然出てまいりますけれども、これは後ほどの議論の中で詰めていただければと思います。

それでは、佐藤さん、お願いします。

 

○佐藤 佐藤でございます。パネリストとして一番困るのは、岡崎大使や田中さんのご意見と私の意見とは余り違わないのです。ですから、小異を捨てて大同につくというのは平和の条件ですが、そうすると議論しなくて、私はこれで終わってもいいのですが、それではおもしろくありませんので、大同を捨てて小異を拡大させようと思います。

 

 

 

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