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そのほかには、中ロの接近がございますが、これは、昨年の4月以来のことなのですけれども、これがどうなりますか。ロシアは台湾を中国の一部と認めて、中国はチェチェンをロシアの一部と認めましたけれども、それをつくって2、3ヵ月でチェチェン問題は解決しました。これはやがて独立しますでしょう。それから、そのコミュニケで、中国はNATO拡大反対を明言いたしましたけれども、それをいってから半年で流れました。反対する意味が余りなくなってきた。

それから、今度の米中会談も、天安門事件以来のトップの接触を復活したということでございまして、先進民主主義国でない大国間の関係、あるいは先進民主主義国と大国との関係は、過去2年におきましても、そう長期的な影響を及ぼすものではございません。その場その場で雰囲気は変えておりますけれども、それほど大きな意味はもっておりません。一番大きな意味をもっておりますのは、先進民主主義国間の協力が非常に確定したことでございます。それがNATO拡大であり、日米安保同盟の強化である。それが大体現在の潮流であると私は考えます。

 

○モデレーター どうもありがとうございました。

同盟としてのNATOと、日米同盟の意義と、それと全く180度違う集団安保という考えについて、極めて明快な説明をしていただきましてありがとうございました。

それを受けて、今度は田中さんにお願いします。

 

○田中 東京大学の田中でございます。本日は、両側に2人の先生がいらっしゃいまして、お聞きになっていらっしゃる皆様方の中にも、私の先生に当たる方が大勢いらっしゃるので、先生に取り囲まれて研究報告をしているみたいな感じでありまして、なかなかやりにくいのですけれども、10分ぐらいで、とりあえず私の考えていることを申し上げさせていただきたいと思います。

冷戦後の安全保障体制における先進民主主義諸国の役割ということですが、この役割を考える前提として、現在の世界をどうみているかということをまずお話しして、その中で、現在のNATOの拡大とか、日米安保の意味とか、アメリカ、日本の役割等に触れてみることができればいいと思っております。

私は、お配りしてあるペーパーに大まかなところは書いてあるわけですけれども、基本的には、今の世界の安全保障を考えるときには、2つのことを考えなければいけないと思っています。

第1は、世界全体としてグローバリゼーションというものの動きが進んでいる。この影響が国際関係にもいろいろ大きな影響を与えているということであります。

第2は、しかしながら、このグローバリゼーションの影響というのは、世界の場所によって違う影響が出ている。あるいは、グローバリゼーションの影響を非常に強く受けている部分とそうでない部分、それに取り残されているかにみえる部分があるということであります。そして、特に現在の安全保障の問題を考える場合には、グローバリゼーションの動向ということも非常に重要なわけですが、世界の中で、これに対する異なった形態をもつ地域があるということに注目しなければいけないと思っています。

私は、現在の世界を大きく分けると3つぐらいの部分に分けることができると思っていまして、第1は、そのグローバリゼーションが極めて進んだ地域です。

 

 

 

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