シンポジウム
『冷戦後の安全保障体制における先進民主主義諸国の役割』
平成9年11月5日、於ホテル・オークラ
○モデレーター(大河原) お待たせいたしました。ただいまから、本日の公開シンポジウムを開催いたします。
本日は皆さん大変お忙しい中を、私ども世界平和研究所の公開シンポジウムにご臨席いただきまして、まことにありがとうございます。出席者を代表いたしまして、御礼を申し上げたいと存じます。
私ども世界平和研究所では、平成9年度の事業として、冷戦後の安全保障体制を中心の課題としますプロジェクトに取り組んでまいっております。本日は、国際関係論、外交安全保障問題に関しまして、極めて幅広い学識と深い見識をおもちであります岡崎久彦元駐タイ大使と、東京大学東洋文化研究所の田中明彦助教授をお迎えしまして、当研究所の佐藤研究主幹を含めまして、「冷戦後の安全保障体制における先進民主主義諸国の役割」をテーマとしてシンポジウムを開催する次第でございます。
このところの動きを振り返りますと、まず、10月26日から11月3日まで、江沢民中国主席がアメリカを公式訪問致しました。また、つい先週の11月1日、2日には橋本総理がロシアを訪問され、エリツィン大統領との間で極めて歴史的重要性をもつ会談が行われました。そして、この週末には、エリツィン大統領自身が中国を訪問し、それを受けて、李鵬首相が11月11日から日本を訪問するということで、このわずか半月足らずの間に、極めて重要な国際的な行事が山積しているように思います。いわば日本、米国、中国、ロシアというアジアの情勢に極めて重大な影響力を有します4つのプレーヤーが、このような活発な接触、交流を続けているという大事な時期だろうと思います。
米ソ両超大国による冷戦が終わりました後の世界を振り返ってみますと、ボスニア、ルワンダを始めとして、領有権をめぐる対立や民族、宗教面での対立を背景とした地域的な紛争が多発しております。また、朝鮮半島、台湾など、冷戦時代から引き続く対立も依然存在いたしております。しかし、冷戦が終わりました後の世界に対応した新しい国際的な枠組みといえるようなものはまだまだ生まれておりませんし、近い将来に確固とした枠組みが生まれる可能性も高くないように思われます。
そういたしますと、冷戦が終わりました後の世界において、政治、経済、軍事面に大きな影響力をもっているアメリカを中心とした先進民主主義諸国間の協調・協力関係が、世界の平和と安定のために不可欠な重要性を占めていくことになるのだろうと思われます。
本日のシンポジウムの目的は、このような状況のもとで、先進民主主義諸国の役割ということに焦点を当てて、冷戦が終わった後の安全保障体制はどうあるべきかについて検討していただき、日本を始めとする先進民主主義諸国が、世界の安定と平和のために、どのような方策をとっていくべきかについての提言を行うことを目指しているわけであります。
アメリカを中心とする先進民主主義諸国間の協調・協力の関係におきましては、アメリカを扇のかなめとして、欧州においてはNATO、アジアにおいては日米同盟が安全保障体制の2つの柱となっており、極めて重要な意味合いをもっていることはご承知のとおりでありますが、冷戦が終わったことに対応して、そのあり方についても再検討の議論が行われ、いろいろ大きな動きが展開いたしております。