アレクサンドル・イワノヴィッチ・レベジ ロシア国民共和党党首講演会
「ロシアの現状と将来」
平成9年9月18日、於ホテル・オークラ
アジア太平洋地域の発展と日本・ロシア
アジア太平洋地域が2010年には世界の中心になるだろう。現在は、南北朝鮮・尖閣諸島等の領有権・経済危機など様々な困難な問題を抱えているが、各国が協力していくことで諸問題の解決を図るべきである。ロシアは歴史的・地理的にアジア太平洋地域に深い関わりを持ち続けて行かなければならない。これは極東の経済的開発のみに興味があるということではない。アジア太平洋地域の安全保障体制にロシアの参加が必須であるということである。日本も同様の立場にあり、日本は国連安保理の常任理事国になるべきである。日米安保条約も、修正が必要な点もあるが、同地域の安全保障に現在も重要な役割を果たしている。
日本・ロシア関係
アジア太平洋地域の安定にとって日本・ロシア関係は重要であるが、米国・中国・日本・ロシアの関係の中で日ロ関係は最も遅れており、現在は潜在的なパートナーにとどまっている。それは平和条約が締結されておらず、領土問題・第二次大戦中の抑留捕虜問題などのためである。今後、両国関係を強化し、具体的な問題解決に取り組むべきである。領土問題の解決なしに、日ロの平和で安定した関係は構築できないこと、経済協力も困難なことを理解している。
北方領土問題
北方領土問題は、法と正義と事実に基づいて解決されるべきものであり、商談として扱われてはならない。旧ソ連は戦後50年にわたり北方領土問題の存在を否定してきたが、事実として、北方領土がロシアの固有の領土であるという証拠はない。歯舞・色丹の返還を決めた1956年の日ソ共同宣言、領土問題の存在を認めた1993年の東京宣言をロシアは認めている。しかし、反対勢力の存在、戦後50年という長い期間が経て地元住民の合意が必要であること、ロシアの軍事戦略上の利益すなわち非軍事化の約束とロシアの船舶航行の自由の保証、北太平洋の安全における日米ロの条約の必要性、ロシアの経済開発への参加の権利などについて、日本側の理解を求めたい。
現在のロシアの心理状態は第二次大戦後直後の日本と同じであり、圧力をかけるの正反対の効果を生む。現在のロシア政府は、国内向けと日本向けと対応を使い分けており、中途半端な状態にある。ロシアの国内世論と対話し、具体的作業のための日ロ共同の作業部会を設置し、今世紀末までに解決案を策定することが必要であると認識している。それが21世紀の友好関係につながると考えている。