ジェラルド・L・カーティス コロンビア大学教授講演会
「朝鮮半島情勢とアメリカの政策」
平成9年7月8日、於ホテル・オークラ
最近の朝鮮半島情勢
最近の日米関係・米韓関係は、ここ数年、大変良好に推移している。一方、北朝鮮の最近の政策については、KEDOに対して協力的であったり、潜水艦事件で謝罪する等、幾分軟化の兆しが見られるものの、北朝鮮の政策は揺れることが多く、依然不透明であることに変わりはなく、今後も注視していく必要がある。
北朝鮮に対する政策のオプション
対北朝鮮政策について、融和策、強硬策、静観策の3つのオプションが有り得る。融和策は米国に支持者が多く、北朝鮮を国際社会に引き入れることにより、同国を『普通の国』にしていくことを狙いとするが、逆に援助により、現体制が力を得ることも考えられる。また、北朝鮮の要求がエスカレートする可能性もある。そもそも融和策は南北統一をソフトランディングさせ得るとの前提に立つが、ソフトランディングそのものが幻想ではないのか。これに対し、強硬策は、援助等を拒否することにより、北朝鮮の体制を締め上げることを意図するものであるが、逆にナショナリズムが盛り上がる可能性もある。また北朝鮮の反発を招きかねない。よって現状では、静観策が最善の策であると思われる。何でも与えるのでもなく、何でも拒否でもなく、条件付きでの付き合いがよい。自ら動かず、状況に応じた対応を都度考えるべきである。
また、韓国は大統領選を控えている関係で動けず、米国も韓国の動きがない段階では動かないであろうことから、現在の韓国及び米国の対北朝鮮政策は、結果として静観策になっている。今が一番いい状態であり、半年〜1年待つのがよい。
日米防衛ガイドライン見直し
今回の日米防衛ガイドライン見直しについて、韓国の高官が「歓迎はしないが理解はする」と述べており、韓国は今回の見直しについて、一定の理解を示していると見ている。
また、今回の見直しに際し、今まであまり日本国内でオープンな議論がなされていなかった安全保障問題について、日本国内で議論が深まることは大変よいことであり、議論を通じて日米関係はより安定していくであろう。ガイドラインの内容についても非常によいと思う。もちろん、未だ不十分な点はあるが、ペンタゴンは日本をよく勉強しており、日本に要求できる限度をよく理解していると思う。現段階で日本ができる限界だと思う。
統一後の朝鮮半島と日米関係
朝鮮半島の統一の可能性も考慮しなければならない時代になった。今後の北東アジア情勢については、朝鮮半島の統一の可能性も、念頭に置いて考えねばならない。統一がアジアのバランスオブパワーにどう影響するのか。統一後に考えるのでは遅い。朝鮮半島の核武装化の可能性も考慮しなければならない。その際、日本も核武装をするのか否かも検討する必要がある。また併せて、朝鮮半島統一後の北東アジア地域での米軍の存在意義、及び、同地域における安全保障に関する多国間協議の場の必要性等についても、現段階から視野に入れておくべきである。