アレクサンドル・ニコライビッチ・パノフ 駐日ロシア大使講演会
「最近のロシア情勢と今後の日・ロ関係」
平成9年4月8日、於ホテル・オークラ
ロシアの対外政策
民族間対立の激化が2極対立から多極対立への移行をもたらしているとの全般的な国際情勢認識を持っている。こうした国際環境におけるロシアの対外政策の基本は、新たな国際的分断線の設定を容認しないことにあり、特にNATO拡大による新たな欧州分断の動きに対しては批判的である。
対アジア太平洋政策については、いかなる国をも仮想敵国とは見なさないこと、地域内の安定に資する平和的環境の醸成を切実に希望すること、各国との協力の下にエネルギー開発をはじめとするシベリア開発の加速化を図りたいこと、の3点を挙げたい。
日・ロ間では、今後一層の関係発展が可能であり、具体的には、日本をドイツとともに国連安保理常任理事国の候補国と考えている。政治面・軍事面・イデオロギー面のいずれにおいても両国が相互に脅威を与えていないと考えているし、今後両国間に経済面での競争が生じるとは予想していない。
日・ロ関係の問題点
しかし、日・ロ関係の発展のテンポはまだ十分ではない。その原因として、まず、平和条約が未成立であることが挙げられる。領土問題の存在は否定しないが、それが直ちに平和条約締結の決定的な障害になるわけではない。
領土問題については、私個人の見解であるが、日・ロどちらか一方が勝者に、他方が敗者になるような形での問題解決は不可能である。
今後の日・ロ関係
以上のような日・ロ関係の問題点を克服するために、まず、最高レベルでの交流の緊密化の必要性を強調したい。
次に、冷戦時代の紋切り型なイデオロギー対立からの脱却が必要である。日本ではロシアに対する否定的な論調の報道が多く見られる一方で、ロシアでは日本に関する報道量が少ないというのが憂うべき現状であり、両国のマスコミの果たすべき役割が大きい。
また、極東におけるロシアの軍事力が削減されてきている現状についての日本側の認識を求める。国防大臣級の相互訪問が実現したことを第一歩として、今後、国防当局者間の交流が一層活性化することを希望する。
最後に、領土問題解決のための原則として、?両国が相互に不可欠であるとの認識が高まるような雰囲気作りが行われること、?93年東京宣言に基づき平和条約締結のための話合いが続けられること、?北方諸島発展のために両国が協力すること、の3点を示したい。