ですが、世界中にはそう厳しくないところもたくさんあります。これを放っておいて、これから過度集中とかそのようなことが起きないでしょうか、それに対して、ワールド・ワイドなインステイテューションなり、何らかの仕組みを考える必要があるのかないのか、その点を伺いたいと思います。
○司会 ウォーリー先生、どうぞ。
○ウォーリー 極めて重要で、極めて時宜を得たご質問ではないかと思います。私が思うには、この問題は、極めて深く、また広範なものです。
真に統合されたグローバルな経済に向かって行こうというのであれば、これまでの各国の国内経済の中における運営と管理と同様の問題を世界規模でみていくことになります。主要国の殆どにおいて、アンチ・トラスト制度があり、さまざまな仕組みと法的枠組みがあります。何らかの形の規制の枠組みが必要であることは当然とされています。規模の経済にタガをはめることとそういった統合と集約の方から得られる恩恵の間にはトレードオフがあります。また、競争制限効果が明白になるとともに、それに伴うコストも考慮に入れる必要があります。にもかかわらず、多くの国々は、国内において集中に対する規制の枠組みを有しています。
結局、国際機関は1940年代の状況に戻っているのが現状ではないかと思うのです。マーカス・ミラー氏が言ったような各機関、IMF、世銀、ガット、現在ではWTOですが、こういった国際機関に基づく国際的な枠組みの構造というのは、単純にいえば各国国内経済とのリンケージを扱うものです。そして、各国内経済の枠組みに関する主権を各国は有しています、例えば、もともとは為替レートを防御するコミットメントをベースに発した通貨体制に関する枠組みがあります。貿易体制においても非常に弱い枠組みがあり、ここでは、政府などがお互いに譲歩し合い、自分たちの国内の政策等について統治していくようなルールの枠組みを作っていくわけです。しかし、プレトン・ウッズ体制においては、グローバルな管理を必要とする「統合されたグローバルな経済」の概念が全くないわけです。明らかに、何らかの形でアンチ・トラストのためのグローバルなシステム、グローバルな共同体から生まれてくるような枠組みや鹿則に基づくシステムが必妻となってきます。しかし、現状は、それに近いようなものは何もないわけです。
そういうことで、グローバルな集中という問題を扱うものは基本的に何もありません。これはグローバライゼーションのカナメとなってくる問題だと思います。グローバルな経済に移行するということは、ただ、障壁を取り去るということだけではなく、グローバルな規制の体制を構築していくということでもあります。これがグローバライゼーションの第2の問題なのですが、見落とされてきた問題です。