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○竹中  小島さんからのご指摘は大変難しい問題で、恐らく簡単に答えは出ないのだと思うのですけれども、例えば、自由化は非常に大きな問題をもたらすとこ現象面では確かにいえるわけです。しからば、それなりの制度調整を行つて自由化を少し遅らせて、それでうまくいくだろうかというと、それもまた保障は何もないわけです。日本がいい例なわけです。つまり、透明ではない、自由ではないマーケットを長く維持したことによって何が起こったかというと、見事なモラル・ハザードがこの金融の世界で起きてしまって、今日のような問題が生じてしまっているわけです。

したがって、今、ミラーさんもおっしゃったように、透明で、情報が公開されて、調整機能のある完全な金融市場を一刻も早くつくれということが理想なわけです。そのためには、一刻も早くもっと自由化しろという先ほどの結論になります。その意味では、我々は、今、非常に難しい選択肢の前にいるのです。そこでもう1つの考え方として出てくるのは、これは実は、エコノミストの間ではそんなに評判がよくないわけですけれども、例のトービンタックスのような考え方です。少し前にトービン博士とお話をさせていただいたのですけれども、要するに、これは何かというと、資本の足を重くしろということです。資本の国際的な移動はもちろん必要だし、それによって資源の最適配分も可能なのだけれども、その逃げ足とか動き足をもう少し遅くするためのタックスというのも考えられていいのではないか、ということです。

恐らく、今、申し上げたようなことをどこでバランスをとるかというのが現実の政策になるわけです、私は、市場を自由化することの危険というものも十分わかりますが、同時に、政策当局にディスクレション、裁量が残って、それによって長期にわたって金融のモラルハザードが起き得るという点も、これまた我々の重要な教訓ではないかと思います。

○司会  ありがとうございました。

資本の動きについて、これを一体どのように取り扱うべきか、レギュレイトするのかしないのか、今、両論が出ているように思います。竹中さんもおっしゃったように、右だ左だと簡単にはいいにくいけれども、両論があるということ自体、問題の重要性を示しているという捉え方しかできないのかなという気もしますが、この対応の仕方に関しまして、ほかにコメントはありますか。ウォーリーさん、どうぞ。

○ウォーリー  IMFのパッケージ、そのコンディショナリティーが状況を悪化させているかどうかということについてコメントしたいと思います。

私の印象としては、インドネシアの事件というのは1つの驚きでありました。インドネシアでは、不動産部門に大きな問題はなく、高い成長を続け、輸出は相当伸びていたわけでありますし、国際収支も黒字を警告する試算がありまし

 

 

 

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