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と思います。

これに関連して規制の見直しということが行われます。これは先ほど小堀さんが適切に指摘されたように、決して規制緩和だけではなくて、規制を再び強化しなければいけないようなところも当然のことながら出てくる。この場合も恐らく、我々が無視しがちな2つの問題が混同されているのではないかと思います。それは、日本語でいうところの公私という槻念、パブリックかプライベートかという概念と、官か民か、ガバメンタルかシビリアンかという2つの概念を、どうも混同してしまっている可能性があるということです。

この公私、パブリックかプライベートかというのは、恐らく資源配分のルールの問題です。プライベートなグッズとサービスはマーケットで配分すればいい、しかし、それだけでは配分されないパブリックなグッズとサービスというものがある、その見直しをどうするかというのが1つのテーマです。しかし同時に、それを担う主体がガバメンタルなものか、シビリアンなものかというのは、これはこれで1つの経営組織の問題として別の次元の問題です。この2つの議論を、世界的な議論はともかく、少なくとも、日本の中での議論はかなり混同していて、そういった区別も行わなければいけないのではないかと思います。

さて、貿易を促進するWTOの問題でありますけれども、WTOに関連しましては、今まさにウォーリー教授が指摘されたように、グローバルないしはマルチラテラルな機関とリージョナルな経済組織の関係をどのように考えるのかというのが、90年代に入ってからの非常に大きなテーマになりました。一般には、リージョナルな経済組織というのは地域のブロック化を作ってしまって、それで経済には好ましくないというように当初我々経済学者の多くは考えたわけです。けれども、今ブロック化が起こっているかというと、これは評価の問題ではありますが、そんなにひどいことは起こっていないのではないかと思います。むしろ、この間みられたのは、リージョナルな組織とグローバル、マルチラテラルなオーガニゼーションの間での競争であったという見方もできるわけです。

例えば、ガット・ウルグアイラウンドが合意したのは1993年の年末であったわけですけれども、その年の秋にAPECのシアトル総会が行われて、APECで自由貿易を進めるという、地域での非常に強い姿勢が示されたことによつて、ある意味でガットの加盟国は自分たちの存在を示すためにも何かの合意をせざるを得なくなった。こういうことは過去にもあったわけで、1950年代から1960年代にかけて、ヨーロッパで今のEUに当たる1つの経済組織ができた時に、ある意味でそれに対折するためにガットのケネディラウンドのようなことが行われています。そうした意味でのマルチラテラルな組織とリージョ

 

 

 

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