同時に、競争相手が増加したという意味で競争上、大きな問題をもたらしているということではないかと思います。これが、いずれにしても1つの背景です。
もう1つは、これはまさにテクノロジーの変化といいますか、どのように表現するかというのは専門家によって違うかもしれませんが、ネットワーク革命といいますか、通信情報技術の変化を背景にしたネットワークづくりです。情報ネットワークが非常に広がって、今までとは違ったタイプの意思決定がさまざまな経済主体で行われるようになってきた。これが大変重要なことなのではないかと思います。
これは、いいかえれば次のような言い方もできます。つまり、今の我々の時代というのはグローバライゼーションという言葉をかりて、我々はまさに2つのフロンティアを有しているということを表しているということです。1つは、まさにマーケットの規模が拡大したという意味でのマーケットのフロンティアです。もう1つは、技術のフロンティアです。フロンティアの時代であるからこそ、実はもっと競争して、その中でのインセンティブを高めて、それによって、その成果を利用できるようなシステムヘの変化、程度の差はあれ世界中のどの国もそういった方向への変化を進めているということだと思います。インセンティプを与えるわけですから、当然のことながら、その結果としては格差も出てくる。しかし、インセンティブを与えることと、先ほどいった情報通信の技術的な変革とが重なって、今のさまざまな現象が起きているというように考えなければいけないと思います。
例のネットワーク革命というと、マイクロソフトのウィンドウズ95のようなものを思い浮かべるわけですが、たまたまマイクロソフトジャパンの社長にお目にかかつたので、世界のパソコンの基本ソフトの中に占めるウィンドウズ95のシェアはどのぐらいなのですかとお伺いしましたら、98.5%だという言い方をされました。あと1.5%は何だというのが逆に気になるぐらいなのですが、ほぼ先発で、ネットワークの経済性、広い意味での規模の経済性を生かすところは100%のシェアをとってしまうような、そういった1つのマーケットのバラダイムの変化があるということは重要ではないかと思います。それから取り残された個人、企業ないしは国、地域をどのようにするかという問題が出てくるわけです。
ただ、ここでもう1つ我々が直面するのは、経済学者が今まで議論してきコンパージェンス・セオリーです。つまり、収れんの理論です。非常に長期をとってみると、やはり出発点の所得が低いところは伸び率が高いのだという考え方が、どうも長期的には当たっているという見方が依然として強いのです。そのコンパージェンスセオリーは今は全く当てはまらないのか、必ずしもそうではないのか。こういったところのみきわめも必要になってくるのではないか