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ルは、まず限られた量を貸す、そしてペナルティーレートを課し、更にソルペンシーのないような銀行には全く貸さないというものでした。今回、IMFは相当の金額を動員しようとしてきたわけでありますけれども、特に金利を高くすることはしませんでした。しかし、タイの方々、韓国の方々が強調すると思いますが、受け入れ国へのコンデイショナリティーをかなり厳しくしていたわけです。これによって、いろいろな問が浮上してきたわけです。コンファレンスでもその全てに答えることはできなかったわけでありますが、大きな議論を呼び起こしたと思います。

まず最初の問というのは、資本取引を可能な限り自由化したがそれで良かったのかということです。香港に対しても、IMF協定の条文が変われば、資本取引の自由化を要求できることになります。

2番目の問は、IMFは正しいコンディショナリティーを課したのかということであります。ジェフリー・サックスは、余りにもデフレ効果が大き過ぎ、正しくなかったと言っています。

3番目の問は、伝播は阻止できたのか、もう終わったのか、ということです。

4番目の問はもう少し広範なもので、アジアのモデル、奇跡的な成長モデルというのは、もう少し透明度の高いものに変えていかなければならないかどうかということです。

最後の5番目の問は、会場の皆さんの議論をよぶことだと思いますが、鍵となる日本の役割です。日本の近隣諸国通貨はみな殆ど減価しています。そうすると、日本への需要がそちらの国にシフトします。近隣諸国は、一部IMFの圧力によって、大きなデフレ策をとっています。これによって、東アジアの全体としての総需要は低下します。では日本は何をすべきでしょうか。

第1に、ウォーリー氏も言っていますが、資金を引き揚げて問題を更に大きくするな、ということです。それらの国は、現在IMFにモニターされているので、日本は貸し付けをロール・オーバーしても安全です。

第2に、それらの国からの輸出を受け入れるようにする、円を切り下げない、ということです。日本の当局は、130円を底に設定して、それより円安にならないようにしているように私は思います。

第3は、結果として、財政政策のスタンスを引き締めないということです。もう既に需要が縮小するリスクがあり、日本はこれ以上スタンスを引き縮めて、需要が縮小するようにしてはならないということです。

4番目は、銀行部門における問題に取り組むことですが、今や準備は整ったようです。透明度を高くして、海外の投資家に信頼感を与えることが大事です。財政政策のスタンスを引き締めないのと同時に、これを行うのは非常に難しいかもしれません。ですが、これは国債を発行して銀行部門のリストラを支援す

 

 

 

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