ル協定、オーストラリアとニュージーランドの1983年からの協定といったように地域協定が拡大していることを示しています。それだけではなくターゲット・リージョナリズムといった新しい地域協定も取上げています。すなわち、将来的なターゲットを掲げながらも、具体的な実現方策については論じないといった合意です。APECは、こういった新しい協定・合意等の中心的なものと特徴付けられるでしようし、またアメリカ大陸での合意のような動きもあります。それだけではなく、パイラテラルな協定と取り決めも非常に大幅な進捗をみせています。そうしたリージョンの段階においての協定と合意が、将来的な多角的自由化の妨げなのか、それとも、それをさらに補足するものなのか、そして体制を強化するものなのかということが大きなテーマです。
ペーパーでは、更に体制そのものが将来的にどのように変わり得るのか、また、現行の体制がどれだけうまく機能しているのかも取上げました。将来的に体制の変化に影響するかもしれない要素を取り上げつつ、国際協力をガット構造において持続することの重要性を指摘しています。現行の協力関係は50年以上の長きにわたってつくり上げられたものであり、そういった構造の脆弱性を守っていくことが必要です。
更に、こうした構造における、キー・プレイヤーの増加を強調しています。1960年代、1970年代においては基本的に2つのプレーヤーがいて、日本もますます大きな役割を1970年代、1980年代において担うといった傾向がありました。ウルグアイラウンドにおいては、10の要となる国がプレーヤーとして交渉に参加しており、現在では更に多くのプレーヤーが参加しています。これが、将来の交渉を更に複雑なものにしていきます。
また、貿易政策全般をとりまく環境が変わってきていることを強調しています。貿易政策と他の問題とのリンケージが、部分的に将来の貿易障壁を低くするのではなく、高くする危険性が指摘されています。貿易障壁は戦後一貫して切り崩されていったものでありながらです。貿易政策が、貿易以外の目標を実現させていくためのいわば警察官とするため狙われているのです。例えば、ウルグアイラウンドにおいても知的所有権が取上げられましたし、貿易と環境、労働基準、などについても現在議論されています。
ぺーパーでは、体制における大プレーヤーのコミットメントに関連する困難な問題にも触れています。大プレーヤーの多角的コミットメントヘの関心が薄れてきているのではないか、ということです。最近のアメリカの政治動向として、フアストトラックの状況、また富士フィルムとコダックの件などの議論も行われました。
ということで、要約しますと、内容や形式だけでなく、将来的に行われるのかどうかを含め、将来の貿易ラウンドは不確実なままである、と示唆しました。