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ンドが実施されてきました。ペーパーは、ウルグアイラウンドの構造そのものを振り返るとともに、最近いかに広範な領域について対応するようになってきたのかを強調しています。農業、繊維といったことに着手するだけではなく、いわゆる新分野として知的所有権、投資、更にサービスにも取り組んでいます。また、紛争処理のシステムの大幅な変更が盛り込まれました。そして、前回のラウンドにおいてWTOが作りだされたわけですが、これは事実上、それに先立つガットにとって代わるものです。恒久的なベースは、今までにはなかったのです。

ペーパーでは、更に論議を掘り下げて、ウルグアイラウンドを振り返りながら、新しいラウンドの展望について述べています。先ほども指摘したように、将来的なラウンドが、必ず続いて行われるといったロジック上の必然性はないわけです。一方、多くのコメンテーターは、自転車としてのガットという考え方に大きな優先順位をつけました。すなわち、将来的なラウンドがないような状態が続くならば、それはちようど坂道を転げ落ちるような危険性をもつので、新しいラウンドが必要ということです。ペーパーは新ラウンドのタイミングについて考察しており、ウルグアイラウンド実施のため1994年以降およそ最低10年間かかることを強調しています。もっとかかるかもしれません。従って、その決着がつくまでは新しいラウンドの可能性は薄いであろうということを示しています。

ペーパーは、新しいラウンドの内容にも触れています。いわゆる「ニュー・ニューイッシュー」、すなわち貿易と環境、労働基準、競争政策、投資といった分野の展望をしています。それと同時に相互主義にのっとって行われてきている交渉、貿易パートナーの間でお互いに譲歩しあうといった交渉が中心となる農業、サービス、繊維、関税等が将来のラウンドの特徴となるだろうと指摘しています。

また、ペーパーでは、かつては何らかのイベント・事件が、新しいラウンドヘの準備に際し決定的に重要であると強調しています。ディロン、ケネディ、東京ラウンドが、ガットの中期における3つのラウンドですけれども、ECが創出された後の欧州市場へのアクセスに対するアメリカの関心を反映したものです。その後のウルグアイラウンドは、1981年のリセツションが主因となって開始に至っています。ですから、何らかのイベント・事件が将来のラウンドが開始されるにも必要です。

また、ペーパーでは、ガット、WTO構造におけるリージョナリズムの役割についても取上げました。共存的でリージョナル、多数国にまたがる構造体が存在していることを強調しています。1980年代と1990年代における様々な動向を振り返り、カナダとアメリカの協定、NAFTA、EU拡大、メルコソー

 

 

 

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