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グローバライゼーションは幅広いものですが、いわゆるボーダーレスなグローバル経済への移行としてのグローバライゼーションという形で捉えられました。そこでは、モノと資本、また労働においても自由な移動があります。その3つの中で、依然として、そして将来的にも障壁が残るのが労働移動です。

ペーパーにおいては、ガット、WTO体制とモノの自由負易に対してかなり重きを置きました。ペーパーは、体制の由来、それが1947年以降どのように交渉されてきたのかということにまずハイライトを当てています。第1に、1930年代に生じた恐ろしい経済問題を繰り返さない、ということです。ご存じのように1929年から1931年までの間に70%から80%も世界貿易は下落しました。まず考えられないような事態が起きたわけです。そして、戦後の時代においては、こういったことを二度と繰り返してはならないという非常に強い思いがありました。1930年代の出来事のきっかけとなっていったのは、各国の政府の政策対応が、貿易障壁の引き上げ、競争的な通貨の相互切り下げに踏み込んでいったことが大きな原因と考えられました。

第2に、ガット体制は1947年に設けられましたが、戦後の復興を支援することがもうひとつの目標でした。それを更に広範に、グローバル経済の中で、貿易を成長のための機関車・推進役とすることに関心を向けることになりました。貿易を専門とするエコノミストの間には、ガット、WTO体制が、すさまじいまでの成功を戦後の時代にみせたことにはコンセンサスがあります。貿易は、所得の成長に比べておよそ2倍の成長をみせています。したがって、貿易のGDP比は非常に急速な伸びをみせてきています。ここ数年間の間は、所得の伸びの大体3倍でもって貿易は伸びをみせています。ですから、貿易は成長にとって決定的に重要というだけでなく、貿易の役割が低下、あるいはもしも後退するということになれば、潜在的な破綻を意味します。

ガットとWTOの構造をみると、基本的に3つの主要構成要素があります。まずは、貿易のための枠組みを改定する条約、2つ目には国際的な交渉を通じての縦続的な自由化、3つ目には機関としての構造体そのものです。最後のものは、WTOの事務局という形で示されているわけですが、ここで紛争の処理などが行われていますし、それ以外にも交渉のための一般的な準備といった過程も行われています。

自由化プロセスは、今までに8つのラウンドを生み出してきました。1994年に決着をみせたウルグアイラウンドが、その最後のものとなっています。ラウンドそのものの構造をみるとこますます複雑なものになってきたという傾向をみてとれます・・・ラウンドとラウンドとの間の年月が長くなってきましたし、ラウンドの終結までかかる月日も長くなってきました。そして、次のラウンドを実施しなければならないという義務はないのですが、これまでは次々とラウ

 

 

 

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