地への技術の拡散に基づくものであります。これらは、グローバライゼーションの3つのエンジンです。
歴史的にみれば、それは19世紀末の段階から既に姑まっています。ヨーロッパの中でも、殊にイギリスが非常に多くの資本を投入し、貿易を拡大しましたが、これを技術開発と交通手段の発達その他に基づいて行ってきたわけです。それら全てが、経済的リソースを移動可能とし、ヨーロッパ、アジア、その他の大陸との間で貿易を拡大してきたわけです。
第1次、第2次世界大戦の間においては、グローバライゼーションは抑圧されました。でありますが、戦後の時代においては、ガット体制を通じて貿易の拡大と投資の拡大は通商の自由化の基本的な原則となり、そしてまた資本市場の自由化が原則となりました。これが、ガットの基本的原則でありました。ベルリンの壁が1989年に崩壊し、それから突然、情報技術の革新と同時に、グローバライゼーションが世界貿易と投資の焦点となってきました。これが現在のグローバライゼーションの背景です。決して新しいものではないけれども、グローバライゼーションのスピードは、ここめところ非常に急速なものになってきました。政治、経済上のさまざまな理由によるものでありますが、グローバライゼーションには光と影があるというのは申し上げたとおりです。
それでは、光は一体何か。先ほど言いましたように、グローバライゼーションは、世界経済を拡大していくための極めて効果的な方法です。それと同時に、影の側面もある。それは、各国間、そして各国内における所得の格差です。
所得の格差は、OECDの各国の中でさえ現れており、これは急速な経済の自由化と労働市場の自由化によって生じている現象です。新興の市場経済国と競争していくためには、OECDの、殊にヨーロッパの国々は、はるかにダイナミックな構造調整を実現させる必要があります。繊維や鉄鋼などさまざまな基幹産業において、実は雇用が失われてきているというのが現実であります。製造業部門からサービス業部門へ急速に切りかえることが、先進国が生き延び、更に生活を向上させる唯一の道です。けれども、サービス業部門においては、新たな雇用の創出が余り現れていないというのが、OECDの諸国にとって、その中でも特にヨーロッパの国々において大きな問題となってきています。
光と影があるということは申し上げたとおりですが、事実グローバライゼーションは、新興の、特にアジアの各国に対して恩恵をもたらすことが考えられます。最近のOECDの研究で、『2020年の世界経済』という題名で公表された報告書によれば、恐らくこのような急速な変化やグローバライゼーションの恩恵を最も受ける国々は新興経済国であり、特にアジア諸国がそうです。事実、2020年までの23年間、アジア各国の年間経済成長率はおよそ7%で、相対的にかなり高いものになります。中国に至っては8%を上回る。一方、アフリカ