しては、GDPの大きさと1人当りGDPの国際比較をするためにPPP(purchasing powerparity:購買力平価)を使うことを勧告しております。しかし、68年SNAにはありません。
このプロジェクトに68年SNAを使われる危険は、非常に大きなものがあるのではないかと思います。即ち、そのようなデータセットの国内の一貫性というよりは一貫性の欠如が、現在と将来のデータを損なってしまうのではないかと思います。
そこで、最初の質問として、何故このプロジェクトにおいては、国内の一貫性のために、93年SNAを採用されなかったのか、ということです。
第2の質問は、条件についてでありますが、先程申し上げたように、国際比較のためにPPPを用いることについてでありますが、従来の市場為替レートが、いろいろな理由でPPPからかなりかけ離れてしまっているということがあるわけです。例えば、市場レートが、投機バブル、あるいは為替市場への介入そのほかの理由によって歪められてしまっているかもしれません。
さらに、国によっては、市場が決定するレートというものが存在しない場合もあります。ですから、市場為替レートを使って国際比較をすることは、誤解を生むことがあるかもしれません。だからこそ、「国際比較プログラム」(ICP,International Comparison Program)と呼ばれるプロジェクトが、国連の調整と世界銀行、OECDその他の機関の支援で実施されているわけであります。IMFも、「世界経済の展望」という年次報告でPPPウェイトを適用しております。ですから、2番目の質問は、このプロジェクトでは、PPPの推計を考慮しないで、どのようにして外部の一貫性を担保することができるのでしょうか、ということであります。
尾高:最初の質問は、なぜ1968年のSNAを基準にとったか。1998年のSNAは、いまご指摘の通り、インフォーマル・セクターと、フォーマル・セクターを区別しているとか、環境の問題を扱っているとか、おっしゃるように、新しい特色があります。現在の開発問題に関心がある場合には、1993年のSNAの方が、当然優れているというのはおっしゃる通りだと思います。
ただ、同時に、私どものプロジェクトは、歴史データにまで遡って、もしできたら19世紀からつなげたデータをこしらえたいということでありまして、この観点からいうと、率直にいうと、1968年のSNAでも難しい。1968年のSNAをスタンダードにすると申しましたけれども、もっと本当のことをいうと、非常に細かい所まで戦後の1968年段階のデータの状況とか、あるいは概念とかを遡って、例えば1910年のデータにそのまま当てはめるというのは、事実上不可能なことが多いわけです。
1993年のSNAは、ロシアその他いくつかの国では正式に採用した。タイもそうでしょうか。次第に多くの国がこの方針にのっとってデータを作っておられるということは承知しておりますけれども、日本はまだそうではないですね。そういうこともありまして、僕らとしては、1968年のSNAを採用するのが精一杯の所ではないかという決断をしたわけです。
ただ、おっしゃるように、将来、全世界が例えば1993年のSNAにのっとってデータを作るよ