て、困難に直面してきました。これらの困難としては、例えば技術的な専門能力の不足、既存のデータ・ソースの不十分さがあげられます。
明らかとなったデータのギャップを埋めるためには、新しいデータ・ソースの開発が必要ですが、これは、特に、適切な統計基盤を持たない国々にとってはなかなか難しいことであります。例えば、国際収支に関する直接海外投資統計の作成などにおきまして、国によっては為替管理の必要から生ずる行政データに依存してきました。しかしながら、このようなデータはカバレッジの完全性と適時性の点で利点があるものの、収集されたデータの範囲と統計的および経済的な概念との間に相違があるというような重大な欠点があって、それが相殺されてしまうわけであります。投資フローに関する行政記録が適切でないことから、その結果として、必要なデータを収集するためには、よい設計がなされ、適切に実施された調査が必要だという認識が持たれるようになりました。さらに、為替管理を行うことは今日のグローバルな経済の中では、ますます難しくなってきております。ですから、このような金融フローの統計を行政記録を使って作成していた国々は、行政記録に基づく統計を補うため、調査に基づいたシステムの開発を積極的に検討しております。残念ながら、調査に基づいた効果的なシステムの設計には、相当の技術的な専門性と適切な調査の基盤、特に包括的なサンプリング・フレームが必要となります。
シンガポールでは、例えば、行政記録に基づいた「ティケット・システム」というものを、金融フローを追跡するために持っておりましたが、1978年の為替管理規制の完全自由化によって、これが不十分なものとなりました。そこで、ティケット・システムは1981年に廃止されて、調査ベースのシステムに変わりました。その後、この調査ベースのシステムの範囲とカバレッジが拡大されまして、直接海外投資の流入と流出の両方のフローに関してデータを集める場合には、IMFの国際収支マニュアルの定義とガイドラインに従って行えるようになりました。この目的で行われた調査は非常に大規模なものでありまして、1万2千以上の会社をカバーしております。
経済・金融統計の適切な解釈と評価は、これらの統計が幅広く比較可能でなければできません。国際比較可能性の実現は、これらの統計の作成に関する国際的な基準やフレームワークがあって可能となるものであります。しかし、前にも述べましたように、これらの国際基準に準拠するためには大変な努力と資源を必要とします。その上、国々の状況はユニークであり、また、統計の発展レベルも異っておりまして、これらの基準の実施もこれによって変わってきます。これらの統計を作成するために使われるデータ・ソースも、そのカバレッジ、正確性や適時性の適切さの点で質的に大きく異ったものとなっております。
ですから、意図や努力が最善のものであっても、国際経済金融統計の比較可能性は、捉えづらい目標であります。特にこれは、近年ますます速いペースで増加している貿易や投資のフローに関していえるわけであります。
その例としましては、オフショア金融市場の居住・非居住の取り扱いがありますが、つまり活動