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うことがあります。統計調査を通じてデータを入手するという代替手段は、回答の負担とデータの秘密性を理由として、調査に応じることをますますいやがる企業に対応しなければならなくなる、という大きな課題を生じさせます。

もうひとつ、貿易や資本フローを通じる一層の国際的な連携によって、新規の大幅なデータ需要が生じております。それらは、生産性、事業コスト、為替レート、金利、そして金融統計に関するデータ、財政金融政策立案のための迅速で短期的なマクロ統計、景気循環の変動についての早期警告指標、そしてデータを作成し情報の管理および公表を改善するため、進歩したコンピュータ・情報技術を活用することであります。

統計の時間的および空間的な比較可能性を向上させるために、国レベルの統計専門家は、まず国内の統計制度のなかで統計の改善と調和を図らなければならず、さらに、例えば、共通の分類、定義、そして恐らく、調査表、手法をも使うことによって、他の国々とも調和を図るべきでありましょう。メキシコ金融危機の直後にIMFが導入した「特別データ公表基準(SDDS)」および「一般データ公表基準(GDDS)」は、まさしくマクロ経済の実績と政策との透明性が重要であること、また、市場参加者にとって必須で、信頼性があり、適時性のあるデータを公表することの重要性を実証するものであります。国の統計部局の多くにおきましては、資源と専門能力がないという理由で、こうした基準を遵守することについて留保を表明しております。

国際比較可能性という点において、1993年のSNAは、出発点としての、よい統計フレームワークを提供するものであります。これは、各国内における、また、各国間における経済関係を定義するための計算上のフレームヮークであり、経済発展のプロセスを反映させるような一貫した統計体系を確立しようとするものであります。サテライト勘定を通じて、社会開発の一定の要素を組入れるというような規定もあります。1993年の勧告は、すべての協力機関により支持され、統計の国際比較性における勧告の役割と有用性が大幅に拡大されました。1993年SNAは、また、将来の状況に応じて修正可能な、柔軟なシステムを伴った標準的な定義と概念を育成するものであります。ほとんどの国は、すでに、1993年SNAを採択するという計画を発表しております。1993年SNAでは、また、その他の国際システム、例えば「国際収支マニュアル第5版および政府金融統計」との調和がなされております。

SNAのフレームワークは、それ自身、国民の人間的な福祉の持続可能性をうまく測定できるものではありません。可能な場合には、データの男女間格差も含めて、その他の追加的な情報によって補完していかなければなりません。そうすることによって初めて、例えば、福祉、不平等、貧困、人材育成および環境といった社会的、政治的さらには精神的な側面のような幅広い側面の問題をカバーし、全体的傾向の把握が可能となってくるわけです。それ故、社会を記述するための事象の統計的な測定は、今後数十年間に劇的な変革を遂げていかなければなりません。既存の一連のデータは、適時性といった点も含めて改善が必要となります。社会がますます複雑になり多様化するに従っ

 

 

 

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