て、新しいデータセットが必要となってくるわけです。
経済指標は、必ずしも、しばしば極めて重要となる人間の福祉についてあらゆる社会的、政治的、そして精神的な側面を捉えてくれるものではありません。さらに、都市化、市場の自由化、投資の影響といった、より広範な開発トレンドが社会に与える影響に関しては、ますます我々は知識を持ち合わせていないわけであります。そのような評価のための情報を集めるには、統計基盤をさらに強化しなければなりません。これは特に重要な作業でありますが、決して容易なことではありません。様々なスキルが必要であり、また、異った形の統計活動を行っていかなければなりません。
同様に、国民所得の計数は、所得分配や貧困発生率についての情報を提供するものでもありません。貧困層における収入と支出とを明らかにするため、世帯調査のためのデータが必要となります。ここ10年の間、調査手法の標準化について相当によい進展がなされてまいりました。そして、いまや、多くの国々で世帯調査が行われ、かなり専門的な貧困の測定も行われるようになりました。それにもかかわらず、多くの途上国においては、定期的で、より頻繁な形での世帯調査を行っていかなければなりません。しかし、国家間で貧困発生率を比較することは難しいわけであります。
同様に、所得の上昇は、必ずしも人々の状況の改善を意味するものではありません。人間開発の様々なデータも必要となります。例えば、乳児死亡率、識字率、就学率、あるいは医療施設に対するアクセスといった重要な社会指標に関するデータは、ほとんどの国々で入手できるようになっています。しかしながら、これらのデータの信頼性は、部分的なデータから間接的に計算した指標であったり、あるいは場合によっては、以前の測定に基づいて推計した指標であったり、まちまちであります。まだまだ多くのことをやっていかなければならず、国々に対して、少なくとも、 ミニマム・データセット(MSDS)を収集し、維持するプログラムを開始するように説得が行われております。
そして、総所得の成長が、例えば大気と水質の汚染、あるいは二酸化炭素その他の有害ガスによる地球の温暖化、都市犯罪の問題、さらに都市部への農村からの人口流入による都市の生活条件の過密化といった環境に対する悪影響を伴うならば、所得の成長による福祉面での利益を割り引かなければならないことになるわけです。環境条件の定量的な側面に関する情報も、一部には概念上の問題、例えば土壌枯渇、自然の喪失、あるいは大気汚染をどう定義するかといった点、また、生の事実を測定するためのメカニズムが存在しないという事実によって、特に不適切なものとなっております。いくつかの国では、人工資本の減耗に関するいくらかの推計が入手できますが、 しかし、石油や同じく重要な鉱物資源のような天然資源の枯渇に関する推計は、人手不可能であります。
最後に統計専門職員の研修需要についてお話しする前に、社会における人口統計面の変化の一つの重要な側面に関する信頼できる統計のもつ関連性と重要性について簡単に触れたいと思います。これは、開発と所得の成長に対応して出産率が低下し、老齢化する人口から生じる需要に関連しております。高齢者は扶養されなければならず、そのために政府が負う責任と社会の若い世代と将来