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や水質の汚染などの環境悪化、弱体で野放図な金融・銀行システム、また、インフラの隘路、そして高度成長の受益者と持たらざる者との格差の拡大、また、農村と都市の格差、そして腐敗、といった横たわる基本的な問題を覆い隠すことになりました。ひいては、社会的および環境上のファクターに十分な注意を払わなかったために、巨額の資金を投じた開発計画とプロジェクトの有効性は損なわれております。

このような状況は、政策立案者の意思決定プロセスにどのような影響を与えているでしょうか。社会的な政策の有効性を測定することは、政策立案者にとってますます重要になっております。社会経済的な進歩を総合的に理解するためには、社会、公平、環境といった問題を取り込んだ、より幅広い物差しが必要になります。そして、政策立案者はますます特定の地域、部門、グループに焦点を当てたミクロ統計に依存するようになっております。同時に、これらのデータは、進歩を測定し、モニターするための政策関連の指標として集計される必要があります。

このような測定と集計のプロセスは多面的でありまして、新たな領域の出現は、特に開発の経済以外の側面に関するデータをどう取り扱うかという点で、統計専門家にとって新たな課題となっております。

アジア太平洋諸国間で成長パターンに多様性があるのと同様に、統計の発展水準にも大きな格差があります。統計の発展水準は、経済の発展段階と対応関係にあります。発展途上国の大部分においては、統計の基盤は不十分なものであり、統計上の大きなギャップが残っております。統計の状況を示すアジア太平洋諸国の地図を頭に描くとしますと、「データ入手不能」と記されているところは、開発のもっとも遅れている国々と陸に囲まれた国々、過渡期の国々、太平洋諸国の国々ということになります。

同様のことが、人手可能なデータの精度や適時性についてもいえます。統計作成の責任の大部分は、いまだ政府にあるということでありますので、統計基盤の開発と維持は、将来も、政府にとって重要な役割となるでしょう。ですから、アジア太平洋地域の大半の発展途上国にとりまして、政策形成や意思決定のための適時で信頼性、関連性のある統計を作成するために、統計制度の開発を促進する緊急の必要があります。また、これらの国々にとって緊急の課題は、より発展した国々の統計開発のレベルまで追いつくことであります。つまり、発展途上国は、さらなる資源と専門能力を用いまして、この統計上のギャップを埋め、また、新たな統計フレームヮークを開発し、実施しなければなりません。これは、国の統計部局にとって、特に国の支出が制限され、そして、経費削減のための予算改革が行われている時期には、難題であります。

これらの地域において多かれ少なかれ採用された対外指向の成長戦略によりまして、各国経済が世界との相互依存性を大幅に高めることになり、この傾向は、将来さらに強まると思われます。

その結果、いくつかの影響が出てまいります。まず第一に、地域内および世界レベルでのビジネス活動のグローバル化は、しばしば強い規制緩和を伴いまして、伝統的な統計情報源が消えてしま

 

 

 

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