持続的経済発展を維持するための早期警告指標としての資源の枯渇
インドネシア中央統計局
統計解析・開発部長 ラオデ・シャフューディン
[要 旨]
国の発展と福祉は、国民所得データに基づく1人当たりの所得によって測定される。国民所得は、経済実績及び経済成長の傾向を見るうえで一番利用度の高い指標となっている。しかしながら、現在の国民経済計算体系(SNA)には、天然資源の枯渇や環境の質の悪化といった問題は反映されていない。特に、天然資源の欠乏は、発展の持続可能性を阻害することになるだろう。
発展の持続可能性には、社会的な持続可能性、生態・環境上の持続可能性及び経済的な持続可能性がある。国連環境開発委員会では、持続可能な発展とは、後世代が彼ら自身の需要を満たすことのできる能力を犠牲にすることなく、現在の需要を満たす発展であると定義している。この定義には、将来の世代のために天然資源を量的にも質的にも残すべきだという一種の警告的な指標(ゾーン)の意味合いも含まれている。
経済活動やGDPのレベルの増加は、天然資源の枯渇や環境の悪化をもたらした。天然資源に頼って経済成長を推進してきた国々は、天然資源の管理とそれらを利用する上での効率を良くする必要がある。
エコノミストにとっては、天然資源は資本として取り扱える対象である。これらは生産要素であり、労働、資本及び原材料と結合して、消費や生産過程で使われる財やサービスを生産する投入物である。天然資源は二つに分けて考えることができる。一つは再生可能な資源で、使用されるかどうかに拘らず継続的に存在するものであり、もう一つは再生のできないストックの限定された資源で、一度使ってしまうとなくなってしまうものである。経済上の機能の点から見ても、それらは自然の財産であり、生物学的資産、生態系を含む土地、下層土(鉱物資源)、水及び大気として分類できる。
天然資源の種類は国ごとに異なっている。1995年度にGDPのおよそ15%の割合を占めたインドネシアの石油やガスのように天然資源が国家経済に大きな役割を果たすこともある。SNAに計上される天然資源は、経済資産と呼ばれる。
特定期間における天然資源のストックとフローの内容を知るには、統計データによる情報が必要である。したがって、各国とも、天然資源に関連した統計情報を完全なものにすることが要求される。持続可能な発展のための指標を構築できるように、国連は「環境統計作成のためのフレームワーク」(FDES)と、これに基づく天然資源勘定を提供している。
天然資源勘定は、物理的及び金銭的なタームから構築することができる。物理的な勘定は、資源のストックとその増加及び減少(生産に伴う枯渇やその他の要因による減少)といった変化に関する情報を提供する。金銭的な勘定は、環境・経済統合勘定体系(SEEA)を統合するうえで必要である。SEEAでは,天然資源の枯渇が考慮されるので、国内純生産の水準に影響を与えることになる。
天然資源の枯渇は、天然資源をどれくらい先まで使用できるかを知る上での指標となる。この指標は、天然資源に関してそれが枯渇することのないような経済政策を作成するよう政策立案者に早期の警告を与えるものでもある。