経済のグローバル化と経済・金融統計
シンガポール通貨庁調査局国内調査課
シニアエコノミスト セリン・シア
[要 旨]
ますますグローバル化が進む今日の世界において、諸国の経済及び金融活動は相互に密接に複雑に絡み合うようになっている。国境の内側で国内経済を監視するだけではもはや十分とは言えないのである。アジアにおける最近の出来事が示すように、一国の金融危機が国境を越えた問題を派生させ、近隣諸国に悪影響を及ぼすこともあり得る。
政策立案者やアナリスト、それに市場の参加者が金融及び経済上の発展を理解できるかどうかは、適時かつ正確なデータの利用可能性にかかっている。IMFがデータ提供のための国際的な基準を確立しようと努力しているのもこうしたことの現れである。本論文では、こうした事例やその他の新たな試みについて繰り返し述べることになる。さらにこの論文は、国際機関が行った統計上の枠組みに関する最新の改訂内容に焦点を当てるとともに、これらの基準や枠組みを導入するためにアジア諸国にのしかかる課題や負担についても注意を喚起している。
国家間で経済及び金融上の統計の比較可能性を確実にする上で、これらの基準や枠組みがどれだけ重要かについても検討を加えている。なお、本論文では、こうした基準があっても、比較可能性という目標は捉えにくいものであるという点も説明している。国際基準の実施は、国ごとの特殊な状況や統計の発達水準に応じて異なってくるだろう。そこで本論文では、ほぼ比較可能な貿易及び投資上の統計を提供するための、国際的及び地域的な取組みもいくつか取りあげて検討を加えている。
本論文では、シンガポールにおける考え方を論じている。金融センターとしても貿易経済でも主要な位置を占めているシンガポールは、適時かつ信頼性のある情報の重要さを認識している。そのことは経済及び金融統計の人手可能性を高め、透明性を確保するため、ここ数年に導入された国際的な取組みに対してシンガポールが積極的に参加し支援を表明していることにも表れている。
統計上の基準や枠組みを導入することは、どのような状況でもたやすい仕事ではないが、複雑なグローバル経済における持続可能な発展のためには、それが重要であることは、最近の出来事からも確認できる。アジア諸国は一つのグループとして、それぞれの統計システムの充実に取り組み、これによって金融及び経済秩序の安定維持のための適時の経済及び金融情報を作成して提供していかなければならない、というのが本論文の結論である。