(1)社会的不平等を再生産している最も重要な仕組み、すなわち土地や金融資産などの生産財の所有形態が分からないこと。
このため、マレーシアにおける富の分配についてはさらに調査が必要である。
(2)国内における労働市場の状況及び教育制度の成果の双方に関する詳しい情報が分からないこと。国際市場に新規に参入してきた国々(とりわけ潜在的に安価な不熟練労働力を膨大に抱えている中国やインド)との競争が激化するのに伴い、いくつかの開発途上国で労働需要が変化し、所得の不平等を拡大しているという点も論じられてきた。さらに開発途上国における技術の変化によって熟練労働者を優遇することとなるため、所得格差が拡大しているという議論もみられる。
結 論
マレーシアでは1971年から1990年までの間に、貧困、所得格差、経済上の不均衡を是正するのに成果を収めてきたが、所得における格差の拡がりという問題が残っており、これは同国が将来も引き続き直面する重要課題の一つとなるだろう。マレーシアにおける将来の公正な発展を目指した進歩を評価し、それを確実に達成するための政策立案を行うには、社会的に許容できる所得格差の達成に向けての前進を阻みそうないくつかの重要な変化要因を考慮に入れられるようにする既存の所得や所得関連調査を改善する必要があるのはもちろんである。それに加えて、この重要な政策課題に係わる諸問題を一層深く理解するために、研究者たちも貢献できるようにするため、そうした情報を研究者や学者が利用できるようにすることも不可欠である。