シアにおいて全体的な不平等さが拡大した原因として一番考えられるのは、農村と都市部の間におけるジニ係数が1990年の1対1.70から1998年の1対1.75、そして1995年には1対2.04と上昇したことにも示されているように、都市部と農村部における世帯所得の格差が拡がったことである。マレーシアにおけるこうした所得分配の悪化は、1980年代半ばから取られた政府による自由化政策や規制緩和策にも関係していると考えられる。
所得分配と貧困に関する情報源
マレーシアにおける所得データの主な情報源は、1974年以来3年ごとに行われてきた世帯所得調査(HIS)であり、1995年に出されたものが最新データになる。1970年の所得データは,1970年の事後調査(PES 1970)から得られる。これらの調査はマレーシア統計局(DOS)がすべて実施した。
HISの主要目的は、政策立案に利用するため、所得分配及び貧困の程度と規模に関するデータを提供することにある。これらの調査にはマレーシアの都市部と農村部の両方におけるあらゆる私的な世帯を代表するサンプルが含まれており、調査は包括的であり一貫性を保っている。HISで使用されている所得の定義には金銭及び現物所得の両方が含まれており、経常的で年又はより短い周期で、世帯や世帯の構成員が定期的に得る収入も対象になっている。信頼性については、データのクロスチェックによる優れた結果から、HISは「極めて上手く行われてきたし、開発途上国で行われている調査の中では最も信頼できるものの一つであることも確かなようだ」ということがわかる。またさまざまな年度に行われた所得調査の内容が広範囲に比較可能であるという点でも、一般の見方は一致している。
マレーシアの所得統計は信頼できると思われている一方、所得、なかんずく所得分配に関する詳細なデータがsulit(政府の秘密事項)として分類されていて、研究者は入手できないという最大の問題が生じている。人手可能な所得統計は、5カ年計画の文書とそれらの中間見直し計画に公表されたもののみである。しかもこれらは要約の形でしか発表されず、最近の公文書で利用できる情報は実際、非常に限定されているのが実情だ。したがって所得分配を調べている研究者でも、実際には利用可能なものの一部を見ているに過ぎない。もう一つ言及すべき点は、データでは世帯に入らない収入は除外されており、このうち最も重要なのは分配されることのない企業の利益剰余金である。マレーシアの場合、分配されない利益は相当な額にのぼり、これらの所得が分配されれば、おそらく高所得世帯に帰属し、その場合全体的な不平等さの測定にも違いがでてくるはずである。
マレーシアの所得分配調査におけるその他のギャップ
マレーシアにおける所得の決定要因と不平等の原因を特定しようとする努力は、以下のデータが欠如していることからも阻害されている。