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その他、自由意見としては、へき地医療に適したマニュアルや教科書の必要性や、コ・メディカルスタッフも含めて教育機会の増加、卒後教育のみならず卒前教育の充実、へき地中核病院を核としたリハビリシステムの構築等があげられていた。

 

IV.考察

 

本邦のへき地診療所におけるリハビリテーションの現状を多施設にわたって報告した例はなく、本報告は、自治医科大学卒業生を対象として調査しているものの、初めてのものである。

我々の仮説は、リハビリテーション関連機器等のハードウエアの充実はあるものの、マンパワーを含めたソフトウエアの充実が追随していないであろうというものであったが、本調査結果もおおよそこの傾向を示している。関連機器の設置はおおよそ50%以上の回答施設に認められているが、必ずしもよく使用されているわけではない。このことは、実際使用すべき対象者がいないという側面と、診療報酬の算定結果などからもわかるように使用したいがその適応をはじめリハビリテーションの知識に乏しいため使用せずに終わっているといった側面が考えられる。このことは補装具の処方にも当てはまることであるが、実際にリハビリテーションの卒後研修を受けているものは少なく、一方でリハビリテーションに関する紹介があったり、リハビリテーションの相談システムの必要性や、出張技術指導の希望の高さを考えると、へき地診療所においてリハビリテーションのニーズは高いものの、それに対応しきれていないといった実態が浮かび上がってくる。

へき地診療所におけるリハビリテーションは、病院での理学療法より、プライマリ・ケア・セッティングにおける理学療法が有用であるという無作為割付試験や3)、地域リハビリテーションの重要性4)5)等から考慮すると、我々がまさに力を入れて取り組むべき課題であると思われる。さらには、平成12年から施行される介護保険に関連しても、へき地診療所が取り組んでいかなければならない問題となっている。

こうした問題に対する今後のストラテジーとしては、リハビリテーションが単なる疾病が生じた後のケア方法の一つとしたとらえ方ではなく、ヘルス・プロモーションを含む総合医療の1分野であるという認識の下での卒前・卒後教育のよりいっそうの充実とともに、へき地医療機関、中核病院も含めてソフトウエアの部分を充実させ得るようなシステムの構築が緊急課題であり、自治医科大学としても、相談窓口の開設や理学療法士・作業療法士の定期的出張等を含めへき地診療所との積極的な連携が必要と思われた。

 

 

 

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