対象地区は岐阜県の一山村であり,村を貫くように主要幹線道路が東西に横走している。村内は行政的に3つの地区に分割されている.これを便宜上西からA地区,B地区,C地区と呼ぶ(図1).
?V.対象と方法
住民検診の一部として、肝機能に対する生化学的検査、各種肝炎ウイルス関連因子の測定を実施した.肝疾患を含む各種疾患で通院加療中の者,及び職場で検診を受ける者は検診の対象とはしなかった。
対象:平成9年の岐阜県内の一山村の30歳以上の住民検診受診者897名(男352名,女545名)。そのうち、平成2年,6年,9年を受診した者は491名(男170名、女321名)であった。なお,同村は人口が3200人足らずの小さな村であり過去に急性肝炎が流行したという記録はない。過疎化が進み, 65歳以上人口が26.8%を占めている。
方法:肝機能検査はS-GPTを測定.40IU/I以上を肝機能異常者とした。抗HCVコア抗体4〜6)(以下コア抗体)はEIL ISA法で測定した。判定は吸光度が2.000以上を陽性とした。HBs抗原はEIL ISA法で測定した。また,一部の住民検診受診者の血清に対してHCV-RNAをcompetitive-PCR法7)で測定した。TTV-DNAはnested RT-PCR法3)で測定した。統計学的な解析はχ2検定で行った。
?W.結果
A.平成9年のトランスアミナーゼ高値率とコア抗体陽性率
平成9年の検診受診者897名中トランスアミナーゼ高値は52名(5.8%)であった.男女別に見ると男性352名中32名(9.1%),女性545名中20名(3.7%)であった。男女間の比率は有意な差であった(p<O.01).一方,コア抗体陽性者は897名中145名(16.2ン))であった.男女別に見ると男性352名中51名(14.5%),女性545名中94名(17.2(%)がコア抗体陽性であった.こちらは男女間の比率に統計学的有意差は認めなかった。コア抗体陽性者のうちHCV-lRNAを測定した25名中22名(88.0%)はHCV-IRNA陽性であり3名は陰性であった.従って,当村では30歳以上の検診対象者のうち約14%のC型肝炎ウイルス保有者がいると推測された。
当村を行政区分により3地区に分けて(表1)それぞれの地区の住民のトランスアミナーゼ高値率(表2)及びコア抗体陽性率(表3)を比較した。トランスアミナーゼ高値率では地区別の差を認めなかったが,A地区の住民161名はコア抗体陽性43名(26.7%)で,B地区387名中72名(18.