[?U]地域集団における遺伝性感音難聴の分子遺伝学的および聴覚医学的研究
玉川雄也 自治医科大学耳鼻咽喉科学
萩原秀夫 自治医科大学耳鼻咽喉科学
石田 孝 自治医科大学耳鼻咽喉科学
喜多村健 自治医科大学耳鼻咽喉科学
?T はじめに
遺伝性難聴は遺伝性疾患の中で患者数が比較的多いことが知られており、特にへき地等の人口移動の少ない地域に集積しやすい傾向がある。また遺伝性難聴は、難聴を症候群の一症状とする症候群性難聴と、難聴を唯一の症状とする非症候群性難聴に分けられ、患者数は後者が約3分の2を占めると言われている。前者に属する主要な症候群では難聴について検討されているものが多く、難聴の特徴をある程度患者に説明可能であるが、難聴を唯一の症状とする場合、短期間の観察では進行の予測は困難なことが多く、症例によってはそもそも難聴が遺伝性か外因性かの判断に苦慮することも少なくない。近年の分子遺伝学の発展が、このような臨床上の問題を解決する礎となることが期待されている。
非症候群性難聴では近年相次いで難聴原因遺伝子の染色体上の位置(遺伝子座)が報告されており、1997年12月の時点での同定遺伝子座数は、常染色体優性遺伝が15、劣性遺伝が20、X連鎖位が7となっている。我々はこの中で日本人家系として唯一である、常染色体優性遺伝の11番目の遺伝子座であるDFNAllを同定したが、その聴覚医学的特徴は明らかとなっていない。そこでDFNAllの発症年齢や進行の程度を明らかにし、地域における遺伝性難聴の指導、難聴の早期発見などに役立てることを第一の目的とした。また地域における遺伝性難聴の遺伝相談や発症前診断には、原因となる難聴遺伝子変異の検索が有用であるが、非症候群性難聴では同定遺伝子数は1997年12月の時点で4つに過ぎず、常染色体優性遺伝は本研究開始時点では原因遺伝子は同定されていなかった。しかし最近,分子モーター蛋白であるミオシンV?UA遺伝子が,Usher症候群IBと常染色体劣性非症候群性難聴DFNB2の原因遺伝子であることが報告された1)2)。一方,我々はこの両者を含む領域に常染色体優性非症候群性難聴遺伝子座DFNAllを同定し,DFNAllの位置的候補遺伝子としてミオシンV?UA遺伝子を推定したり。そこでDFNAll家系において、ミオシンV?UA遺伝子