3. 港湾財政に関する課題
(1) 港湾管理者の財務と地方公営企業としての港湾事業
1)港湾管理者の定義
港湾管理者とは、港湾管理法2条によれば、同法第2条第1節の規定により設立された港務局、または同法33条の規定による地方公共団体をさす。図表8-2のように、大半は港をもつ都道府県と市町村が単独で港湾を管理している。一部事務組合は、港湾法第33条にもとづき港湾に関係する地方公共団体が地方自治法第284条第1項にもとづいて組織した地方公共団体で、全国に5つある。港務局をもつのは新居浜市のみである。
2)港湾管理者の財務
港湾管理者の財務については、港湾法第29条に次のように規定されている。「港務局がその業務を行なうために要する経費(港湾工事に要する経費をのぞく。)は、その管理する港湾施設などの使用料および賃貸料並びに港務局の提供する給水等の役務の料金その他港湾の管理運営にともなう収入をもってまかなわなければならない」。すなわち、港湾工事に要する経費をのぞいて、港湾サービスの提供にかかる費用をそれらの使用料などでカバーしなければならないことが定められている。港湾工事に要する経費を間接費とすれば、総費用のうち間接費をのぞく部分、つまり直接費を港湾の使用料金によって収支均衡させるという狭い意味での独立採算制が港湾管理者に求められている。
港湾管理者の財務は、港務局が管理する場合は港湾法にもとづいて処理される。地方公共団体が港湾管理者となっている場合には、地方財政法と地方公営企業法にもとづいて財務が処理される。港湾管理者が運営する事業のなかには、上記の港湾法第29条が規定するように、地方公営企業法が適用されるものがあるので、それらは公営企業会計方式のもとで処理される。したがって、港湾管理者が運営する港湾事業は、その収入と支出について官庁会計方式で処理される部分と、公営企業会計方式で処理される部分とに分かれている。以上から、宮本[1981]によれば港湾会計は3つのタイプに分けられる2。すなわち、?@港湾の全事業に一般会計を採用している港湾、?A無収益事業等には一般会計、収益関連事業(埋立事業ならびに荷役機械、上屋、倉庫、貯木場など)には公営企業会計方式にもとづく特別会計の二本立てを採用する港湾、?B港湾の全事業について公営企業会計方式を採用する