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?@国際企業物流の合理化

例えば、「かんばん方式」などは在庫削減といった企業物流の高度化の動きが、かねてから国内ではみられていた。80年代後半の日本企業の海外進出が進むにつれて、こうした高度物流の国際展開が急激にみられるようになってきた。アジアで集中的な物流基地がよく設けられるのが立地や優遇措置に優れたシンガポールで、そこの自社あるいはリース倉庫で集約的な物流管理を行ない、日本からの生産・中間財輸送のLCL化を図ると同時に、アジア各国の生産基地への効率的供給を行なうケースなどがある。最近では、日本国内からの輸出についても、投入物調達からのリードタイムを短縮するため、コンテナ船の寄港日程に合わせた生産工程のロットやスケジュールを計画する場合もみられる。

 

?A阪神大震災による荷主の合理化行動の表画化

阪神大震災で壊減的被害を受けた神戸港では、大多数の海運・港運事業者が大幅な業務停止を余儀なくされ、多くの荷主が影響を受けたことは記憶に新しい。例えば、神戸の貿易関連企業の輸出141社のうち73社(51.8%)、輸入140社のうち92社(65.7%)がそれぞれ輸送費用の高騰に悩まされている(神戸商工会議所調べ)。黒田ら5によると代替港湾への振り替え輸送による国内荷主の輸送費増加による損失も図表7-6に示したように神戸港が復旧する2年間で約2,000億円と推計されている。また、同様な神戸港におけるコンテナ貨物回復率の推計5も図表7-7、図表7-8(次ページ)にみられるように震災前の状況に回復するのは極めて困難な状況がわかる。特にトランシップ貨物の回復は困難で、近隣の釜山港へ利用者がシフトしたことが考えられる。また、国内輸出入業者も他港ヘ転換したことがうかがわれ、一時的な神戸港の機能停止が荷主の行動に敏感に影響を与えることが理解される。

 

注5 黒田勝彦・安藤昌輝「阪神淡路大震災による神戸港利用荷主の輸送費増加損失について」による。

 

 

 

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