また92年以降の4年間の同様の倍率は1.092となっている。最近4年間の倍率については、タイヤ物流はオートパーツには及ばず、運賃を9.2%上昇させる効果を示しているにすぎないけれども、TSA戦略効果の安定性については、他を寄せつけない堅実性がある。
この安定性を支える大きな力は、コンテナ船物流業がタイヤ荷主のロジスティクス戦略に対応しうる物流サービスを確実に提供していることにある。コンテナ船物流業のロジスティクス戦略対応と使払戦略が、安定的収益確保のうえでシナジー効果を発揮しているとみられるのである。
(4) コンテナ船物流業の戦略構築のあり方
以上において、規制緩和政策に対抗する形で展開されたTSA戦略の効果を評価した。それによって、次の7点を指摘できる。このうち、?@〜?Bはサプライサイド、また?C〜?Aはデマンドサイドよりの評価に基づくものである。
?@規制緩和政策のもとで展開されたTSA戦略のもつ同盟運賃水準への上昇効果をみる時、この戦略は成功したとは評価できない。
?A市場のサプライサイドの観点からの評価がこのような結果となる理由は、TSA戦略が操業度と集中度への作用を通じて同盟運賃水準を上昇させる効果と下降させる効果を同時にもった両刃の剣であるからである。上昇効果は操業度の上昇を通じてもたらされ、一方、下降効果は集中度の上昇によって発生する。
?Bしたがって、最近においてみられるように集中度の上昇が操業度の上昇と同時に発生する場合、仮に前者の影響のほうが強いならば、TSA戦略の総合効果はマイナスになり、同盟運賃水準は逆に低下するのである。この状況が穏やかなレベルで発生しているのが東航市場であり、一方、顕著なレベルでみられるのが西航市場である。
?Cしかしながらここで見方を転換し、東航市場において品目別の物流サービスというデマンド要因に目を向けてTSA戦略のもたらした運賃上昇効果を求めれば、それは上記の?@〜?Bに示した考察結果とは一致していなかったのである。
?DTSA戦略のいわばミクロ的効果は、コンテナ船物流業のサービス差別化戦略が荷主によってどのように受け入れられているかに依存して変動する傾向が強くみられたのである。
?Eこのことから、荷主のロジスティクス戦略に対応して付加価値のあるサービスを提供する物流業はそれに応じた好ましいTSA効果を享受していることがわかる。
?Fしたがって、サプライサイドで展開されるTSA戦略がどのような効果を発揮するのかは、デマンドサイドに対する品目別のロジスティクス戦略対応のあり方によって決定される。なぜならば、このような付加価値のあるロジスティクス戦略対応サービスが用意されることによって、結局は荷主のトータルなロジスティクスコスト(トータルコスト)が低下するからである。
今後ますますその連携の程度を強めていくであろうグローバルなアライアンスの展開は、コンテナ船業の集中度を高めていくことは間違いない。しかし、そのような市場のサプライサイドだけを相手とする戦略レベルにとどまるならば、アジア。太平洋の物流市場の運賃を改善することは困難であろう。その際必要なコンテナ船物流業の戦略は、デマンドサイドに立ちつつ荷主のロジスティクス戦略と結合した付加価値のある物流サービスを提供することである。そうでなければ、集中度の上昇が運賃を下落させるという新たなマイナス効果を発生させることによって、市場は全体として集中度中立的なコンテスタプル市場から抜け出ることは困難であろう。