これに対し第2世代になると、対外投資、国際的合弁、M&A、国際下請契約、ライセンス契約などが結ばれ、企業の国際進出と多様な国際的契約が企てられる。第3世代では、21世紀をリードするであろう革新製品の開発を、多数の企業が相互に優れた技術を提供し合いながら協力して行なう方式が登場し、そのための国際的企業間協定が結ばれるようになってくる10。
このように、国際的にみて「国際貿易→対外投資→国際的企業間協定」と流れる第1世代から第3世代に至る特徴は、各国の産業構造のうえからは、第1世代では、他の企業からは独立した工場の活動を生み、第2世代では、企業間関係の強化に伴う相手先ブランド生産(OEM)や下請契約を登場させ、さらに第3世代に入れば、国際的企業間協定によるグローバルでヴァーチュアルな企業を創造することになるのである。
このような世代の移行とともに、ロジスティクスの視点も次第に変化していくことになる。最初はロジスティクスとは単にトランスポーテーションにすぎなかったものが、第2世代にはディストリビューション中心になり、第3世代では一企業の枠を超えたロジスティクスのチャネルをいかに作り上げていくか、すなわちサプライチェーンをベースにした思考方式への転換が求められるようになってきたのである。その意味で、先に本節(1)でとらえたロジスティクス・コンセプトは、この第2世代のロジスティクス思考に主として対応している。
第1世代のトランスポーテーションの機能は、企業の調達・生産・販売の各部門のなかに埋没する形で相互に独立して取り入れられており、その機能を全体として総合するという意図は全くなかったのである。ところがこれが第2世代になると、企業のなかでディストリビューションの機能を総合的に管理し、物流と情報流の環を専門的に管理するロジスティクス部門が設けられ、トータル物流コストの節約と生産計画・資材調達計画などの立案を総合的に管理するようになる。さらに第3世代になると、一企業の物流と情報流の環を多数繋ぐことによって、企業の枠を超えた数社のサプライヤーの連結環、すなわちサプライチェーンが形成される。その典型がグローバルでバーチュアルな企業によるサプライチェーンの形成である。
注10 OECD,Gloabalization of Industrial Activities, Four Case Studies, 1992,p.13,Table 1参照
(3) 物流業のロジスティクス戦略対応
このような企業のロジスティクス・コンセプトとそれに基づく戦略の進化に、物流業はどのように対応しているのであろうか。物流業の戦略には、マクロ戦略とミクロ戦略の2つがある。国際複合輸送を用いた物流業の戦略を図表3-7のように物的・場所的・時間的・カスタマー志向(人的)サービス基準に基づいて4つの戦略に分類する11と、物流のマクロ戦略とはこのうち物的・場所的・時間的戦略をさし、一方そのミクロ戦略とは、カスタマー志向のオーダーメイド(人的)戦略をさす。また見方を変えれば、物流のマクロ戦略とはキャリア型戦略を、ミクロ戦略とはフォワーダー型戦略であるともいうことができる。すなわち
[物流のマクロ戦略]
国際複合輸送の物的・場所的・時間的戦略 → キャリア型戦略
[物流のミクロ戦略]
国際複合輸送のカスタマー志向のオーダーメイド(人的)戦略 → フォワーダー型戦略
の関係がある。