3. ロジスティクス活動のフレームワークと国際複合輸送
(1) 製造業のロジスティクス・コンセプト
本来、企業内で発生する資材・製品や情報の流れは、企業活動を構成する調達・生産・販売の各部門に付随して発生するから、各部門が相互に連係することなく、各部門で独立して処理されてきた。しかし、最近ではこのような旧態的組織形態から転じて、物流と情報流によって企業内の3部門に横串しを刺し、部門横断的に3部門を統合的に管理するロジスティクス部門が設置されるようになってきたのである。
このような変化を受けて、ここで製造業の採用するロジスティクス活動のコンセプトをまとめておこう(図表3-5参照)8。ロジスティクスは製造業の調達・生産・販売の諸活動に伴って、サプライヤー(またはソース)とカスタマー(またはユーザー)との間で発生する物流と情報流を、企業内に設けられた専門的部門(企業内ロジスティクス部門)を通じて総合的に管理することによって、物流のトータルコスト(主たるものは輸送費と在庫費)を最低に押えるとともに、市場予測、生産計画の立案を通じて、最適の資材調達計画を実施する行動をいう。
ここで物流とは、企業内においてサプライヤーからカスタマーに向かう付加価値の発生を伴う資材・製品の流れ、すなわち付加価値在庫流をさす。これはロジスティクスの作業過程と呼ばれ、ロジスティクスのオペレーショナルなレベルに関係する。ここで求められるのは、資材管理、工場内在庫移転管理、販売に伴う物流管理の総合横断的管理である。
一方、情報流とは、資材や製品の需要に関する企業内の情報の流れ、すなわち需要情報流をさし、それはロジスティクスの調整過程と呼ばれる。ここではカスタマーから与えられる市場情報をベースに販売にかかわる市場予測と受注分析を実施し、これに基づいて作業計画を立案し、次いでこの計画を生産と調達にかかわる資材調達計画に結びつけたうえで、さらにこの計画を生産計画の立案とサプライヤーに対する資材調達計画の実施へとつないでいくのである。
このようにして図表3-5にみるように、企業内ロジスティクス部門では、「調達→生産→販売」と流れる付加価値在庫流と「販売→生産→調達」の流れに従う反対方向の需要情報流が併存し、それぞれの流れが企業外のサプライヤーとカスタマーと結合する。これによって、「付加価値在庫流→カスタマー→需要情報流→サプライヤー→付加価値在庫流→カスタマー→………」と連続的に流れる物流・情報流の環が特定の製造業によって形成される。
注8 Bowersox,D.J.,et al.,Logistical Management Macmillian,1986.
(2) ロジスティクス・コンセプトの進化
それではロジスティクス・コンセプトはどのようなプロセスを経て発展してきたのであろうか。図表3-6にみるようにOECDの専門家グループは、これを第1世代〜第3世代の3つの世代に分けてとらえている9。第1世代(1970年以前)はイギリスが主導し、第2世代(1970〜90年)はアメリカが日本のカンバン方式をJITシステムとして一般化し、第3世代(1990年以降)は再びアメリカがサプライチェーンやアウトソーシングを武器に世界の流れを牽引している。
注9 第1〜第3世代の期間については各国において多少のずれはある。
国際的取引の視点からみると、第1世代では国際貿易が取引を支えており、企業の海外進出はいまだ主流を形成していなかった。