高コスト構造の最大の要因として、日本のインフラ費用の高さ、人件費の高さがあげられる。しかし、このような不可避な要因だけではなく、運営面のまずさによる部分も大きい。資本集約的なコンテナターミナルのオペレーションでは、施設をフルに利用することが必要であるが、現在はフル活動を妨げる硬直的な運営が行なわれており、改善が必要である。
3) 柔軟性の確保
低コスト化の要請は、柔軟性の確保と密接に関連している。荷主ニーズは、港湾物流の改善のみにあるのではなく、複合輸送による連続したドア・ツー・ドア輸送のフローにおいて、結節点である港湾での柔軟な対応を求めている。港湾は、荷主の物流からみた場合、その利用自体が目的ではなく、一貫した物流を構成する一部なのである。
港湾で貨物が滞留することなく、迅速に貨物が積み替えられることが求められている。輸入貨物のなかには、迅速性だけでなく、ラベル貼り、検品、需給調整などの様々な機能が求められる場合があり、これらの機能に柔軟に対応する必要がある。
しかしながら、日本の港湾では、かならずしも柔軟な運営が行なわれていない。日本の港湾運営体制に対しては、日本の船社だけでなく欧米諸国からも是正を求める意見が寄せられている。アメリカ、EUからは日曜荷役の制約、事前協議制による船社の荷役事業者選択の制約、コンテナ貨物の検量義務づけなどに対して改善要求が出されている。この問題は、外交問題にまで発展し、日本船社に対する課徴金の賦課まで発展したが、ようやく収拾の方向に向かいつつある。
港湾運送事業に対しては、現在、港湾ごと、事業区分ごとに免許制がとられ、ほとんど新規参入がみられないほど厳しい運用が行なわれている。運輸省では、港湾運送事業を含め物流部門全般について需給調整の廃上による参入規制緩和、運賃規制の緩和が方向として示されたが、早急な導入が求められている。
4) 国内物流の効率化
価格破壊のなかで、物流費用の構成比のうち国内物流費の高さが目立つようになっている。低価格の製品を輸入しても、アジアの生産拠点から日本の港湾までの海上運賃より陸揚げしてからの国内輸送費のほうが高いと指摘する声が高まっている。
地方の荷主企業のなかには、国内輸送費を削減するため、最寄りの地方港を利用する動きが活発化している。多くの地方港が韓国、台湾と航路を開設しており、この動きを加速している。
国際物流の一貫として国内物流を効率化していく必要がある。港湾と内陸に立地する荷主企業とのアクセスを改善し、ドア・ツー・ドアで効率的な物流体制を整備することが求められている。現在、コンテナに貨物を積載した車両は車両総重量規制や高さ制限のため通行可能な道路が限定されており、早急に道路・橋梁・トンネルなどの補修を進め、通行可能な道路網を整備していくことが必要である。
また、国内輸送部分で低廉な内航海運の利用を進めるため、外貿バースと内貿バースとの連携を強化する必要がある。内航船が外貿バースに着岸してフィーダー貨物を積みとることを容易にしたり、外貿バースと内貿バースの関連性に基づいた配置を考慮することが求められている。