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童年往事-時の流れ-

1985年 138分 カラー ヴィスタ 中央電影公司

 

童年往事

The Time to Live and the Time to Die

 

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ステキな彼女(P41)参照

侯孝賢

ホウ・シャオシェン

監督

 

解説

 

侯孝賢監督の最も自伝的色彩の濃い作品。鋭い人間的洞察力と緻密な演出を持って、家族の肖像を克明に描き、そこに肉親と監督自身との歴史的接点を見つめた秀作。国共内戦により大陸から台湾の田舎町へ移って来た<外省人>の家族のおよそ20年にわたる物語である。故郷を離れて悲嘆にくれる世代と、この地こそが自分の故郷と認識する世代の対比が、過度に感傷的におちいることなく描かれる。自然光の多様、素人俳優の起用、ロングショット、感情の機微を重視した編集のリズムなど、侯孝賢の作風が確立する上でもっとも重要な作品である。客家語と北京語と台湾語という三つの中国語がゆるやかに交錯するが、これは大陸への郷愁、戦後台湾を支配する官僚体制、そして台湾の庶民的現実をそれぞれ象徴している。胡金銓作品の常連俳優である田豐などが脇を固めている。

 

物語

 

国共内戦当時の1947年に広東省で生れ、一歳の時に一家で台湾に移住してきた阿孝(アハ)は、成長すると村のガキ大将的存在になっていった。しかし彼の家庭には、大陸からの移住者の例にもれず、複雑で辛い歴史があった。いつか大陸に帰ることを夢見る父は喘息を患い、時折血を吐いては家族を心配させている。母は家計の厳しさをこぼす。北京語を解さず阿孝を客家語でアハと呼ぶ祖母は、彼を連れて故郷に帰りたがっているが、大陸との緊張状態がそれを許さない。やがて父は病死した。その数年後、高校生になった阿孝は教師に反抗し喧嘩に明け暮れる不良少年になっていた。姉は嫁ぎ、母は喉頭癌で入院し、残った阿孝は弟と二人で祖母の面倒をみることになる。しかし退院した母はあっけなく死ぬ。母の遺品の中から見つけた父の日記を読んだ子供たちは、初めて父の気持ちを理解する。その一年後、年老いた祖母は誰にも看とられることなくこの世を去る。(門間)

 

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