胡金銓
キン・フ-
監督
龍門客棧(P37)参照
解説
キン・フー(胡金銓)監督が中央電影で撮った作品。台湾映画のニューウェーブの代表的脚本家となる呉念真(ツー・ニェンチェン)と小野(シャオ・イェ)が参加している。10世紀、後周の時代が背景。皇帝の病気を治すため、 “天下第一”の名医を呼ばうとするが、それには“天下第一”の画家の絵が必要になり、そのためには“天下第一”の美人が、そして“天下第一”の泥棒がとまるで「ネズミの嫁入り」のように手続きがどんどん増殖していく奇妙な物語。ほとんどがセットの中ばかりで舞台劇のように撮っている。キン・フーとしては異色のおもしろさを持った一本である。『大酔侠』(66)のヒロインでもともとダンサーでもある鄭佩佩(チエン・ペイペイ)が唐代の踊りを見せる。金馬奬の監督賞と美術賞(王童)を受賞した。
物語
五代(907〜960)最後の王朝、後周の皇帝はてんかんの持病に苦しみ、道士の怪しげな薬を常用して、かえって健康を害していた。時々、気がふれることさえある。このままでは亡国の危機を招く。宰相、王撲は部下の何重光、彭軒とともに南唐にいる“天下第一”の名医、張伯謹を連れに行く。しかし、張に国境を越えさせるには晋軍の都督将軍にすぐれた美術品を贈り物としてさし出す必要がある。王撲らは“天下第一”の画家、韋布衣に頼みに行くが、彼はいまとりかかっている壁画の美人像が描けず困っていた。 “天下第一”の美人をモデルにせねばならない。韋布衣が所望した美人は、最近戦死した王景将軍の未亡人、白荷。白荷は自分の持っている翡翠の装飾品の一対のうちのもう片方を求めている。王撲は“天下第一”の泥棒、丁を雇ってそれを盗ませようとする。その翡翠の持ち主とは、皇帝その人だった。宴の席で、丁の娘の領弟が舞姫となって皇帝に近づく。一方、名医張は皇帝に気づかれないように鍼を打とうと待機する。思いがけぬ事故が起こった。
(宇田川)