日本財団 図書館


 

043-1.gif

原郷人

1980年 107分 カラー シネマスコープ 大衆有限公司

 

原郷人

My Native Land

 

043-2.gif

李行

リー・シン

Lee Hsin

監督

 

我らの隣人(P32)参照

 

解説

 

台湾を代表する郷土作家・鍾理和(1915〜60)の生涯を描いた伝記映画。鍾理和は生前はほとんど無名であったが、1976年、台北ではじめての全集が出版され、没後20年を記念してこの作品が作られた。しかしながら、当時はまだ戒厳令下であったため、白色テロによって1950年に処刑された鍾理和の異母兄である鍾和鳴(侯孝賢監督『好男好女』のモデルにもなった)のことは描かれないし、2・28事件(当時鍾理和は肺結核により台北の病院に入院していた)にも触れられてはいない。李行映画ではおなじみの秦漢・林鳳嬌が主演による本作は、李行の独立プロ、台湾自立影業公司による第2作。台湾の中国映画評論家協会が選出する1980年ベスト10の第1位となった。また、第18回金馬賞の最優秀子役賞(鄭傳文)、最優秀挿入歌賞(『原郷人』翁清渓作曲)を獲得している。冒頭の中国東北の冬景色は、韓国でロケをおこなっている。撮影には、陳坤厚があたっている。主題歌・挿入歌はテレサ・テンが歌い、ヒットした。

 

物語

 

客家の青年・鍾理和は、「同姓不婚」のタブーを破って、鍾平妹と駆け落ちする。中国人としての民族意識の強かった理和の逃れた先は、「原郷」である中国大陸であった。満洲の奉天ではじめた新生活であったが、そこもまた日本人がのさばる土地であり、中国人同士の醜い対立もあった。やがて北京に移った理和は、創作に専念し、処女作品集『夾竹桃』を出版する。戦後、台湾に戻った理和は教員の職を得るが、ほどなく肺結核を患い、生死の境をさまよう。ようやく恢復した理和は、故郷で創作活動を続ける。世に認められぬいらだちから子どもたちにつらくあたり、末息子を死なせてしまう。苦悩する理和を立ち直らせ生活を支えたのは、妻の献身的な愛情であった。かくしてついに理和の作品が文学賞を受賞する。よりいっそう創作に打ち込む理和だったが、病は彼の身体をむしばみつづけ、ある日、推敲中の原稿を前に還らぬ人となる。

(加藤)

 

043-3.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION