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[SETSUKO]-逝くのみぞ たゞ雲のごと-

想像上の石川啄木記念館。夜、ひとりの男K-金田一京助が忍び込む。啄木の「ローマ字日記」をひそかに盗み、燃やすために。Kは啄木の終生の親友、庇護者として知られ、啄木の死後20年、「アイヌ語」学者として名を成した。だが、その一切をくつがえすほどのふたりの赤裸々な秘密の日々が「ローマ字日記」には綴られている。Kの猛烈な反対にもかかわらず、周囲はそれを出版するという。Kはそれを阻み、日記を自分だけのものに留めようと、ついに燃やす決意でやって来た。最後にと日記を読む。

「ローマ字日記」は明治41年5月、啄木が妻節子、母カツ、娘京子ら家族を、函館の親友宮崎郁雨に押しつけるように上京後、翌42年の4月から家族の上京する6月までの三ヶ月に書かれた。そこには、家族の圧迫、妻への鬱屈した思い、自らの才能への懐疑、親友の自分-金田一京助との放蕩が、飾らず隠さず、思いの底をぶちまけるように綴られている。Kは往時に戻り、「日記」の啄木と対峙しながら、往時よりも確かな手ざわりで、啄木の心に深く分け入ってゆく。やがて日記を燃やす決意は揺らぎ始める・・・。

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CAST PROFILE

伊藤和晃(Ito Kazuaki)

1977年より劇団昴に所属。即妙な演技、想像力に裏付けされた的確な役作りには定評があり、劇団を支える中堅メンバーとして貴重な存在である。初舞台は演劇学校時代に出演したバーナード・ショウの『シーザーとクレオパトラ』。以降、シェイクスピアなどの古典劇から創作劇まで幅広く舞台に立ってきた。

最近の主な作品は『夏の夜の夢』『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』『熱いトタン屋根の上の猫』『堅塁奪取』など。全国公演を重ねた昴のヒット作『アルジャーノンに花束を』では難役バートを演じ、多くのファンを掴んだ。また昨年から始まった『クリスマス・キャロル』においては独特の持ち味を存分に発揮(魅力的な人物で注目を集めた。

声の出演も多く「楊家将」など海外ドラマや映画の吹替え、海外ドキュメンタリーの声の出演でも活躍している。

 

 

 

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