PRODUCTION INFORMATION
JAPAN
劇団昴(Subaru Theatre Company)
母体である(財)現代演劇協会の創立が1963年。同時に旗揚げした劇団雲、4年後に作られた劇団欅が一体となり、1976年昴が誕生した。
世界の優れた戯曲、日本初演の創作戯曲などを中心に年間4〜5作品を上演。さらにこれら本公演とは別に、ロングラン作品の全国巡演、中学・高校生を対象とした鑑賞教室、若手俳優たちを中心としたアトリエ公演なども頻繁に行っている。
また海外の劇団との交流にも積極的に取り組んでおり、招聘公演の他、共同の舞台製作も多く実現している。
代表作には『エデンの東』『セールスマンの為』『アルジャーノンに花束を』などがある。
DERECTOR'S NOTE
深夜にひとり、石川啄木の「ローマ字日記」と向かい合う金田一京助。時は昭和の初期。
啄木は1912年に26才でこの世を去り、妻の節子は翌1913年に27才で亡くなっている。
啄木が23才のとき、東京でひとり下宿暮らしをしていたときにローマ字で書き記した日記には、「天才歌人啄木」のイメージを粉砕するような別の面がある。他人には見せるつもりがなく書きとめているので、公表されると他人のプライバシーを侵すことになるのではといったことがらも含まれるが、それにもかかわらず、ここには啄木自身と彼をとりまく周囲の人間像が生き生きと描かれているのも疑い得ない。
啄木がこの日記を読ませたくなかった一番の相手は妻節子だったと思われる。SETSUKOというローマ字の題名のもとでこの日記の世界が上演されることを知ったら、きっと啄木は苦笑いするのではなかろうか。
身勝手なダダっ子とも見える啄木にとっての家族とは、妻とは、仕事とは何だったのか。語り手である「金田一」の家族、仕事ともからめて考えたい。
村田元史
DIRECTOR'S PROFILE
村田元史(Murata Ganshi)
1965等より(財)現代演劇協会に所属。劇団雲から昴にわたり数多くの舞台を手掛けてきた。登場人物の心理的な側面をじっくりと丹念に描く演出に、多くの根強いファンを持つ。代表作は「オセロー」「じゃじゃ馬ならし」「リチャード二世」「修道女」「明暗」「アルジャーノンに花束を」そして昨冬の「クリスマス・キャロル」などがある。
1977年度文化庁芸術家在外研修員としてニューヨークの演劇学校ネイパフッド・プレイハウスにて研修。93年にはミネソタ州セントポールのマカレスター・カレッジで現代日本演劇の講座を受け持つ傍ら、秋元松代作「礼服」を演出。その経験を生かして劇団の海外交流に果たしてきた役割も大きく、95年に米国ミルウォーキー・レパートリー・シアターのジョセフ・ハンレディと共同演出した「沈黙」は読売演劇賞作品賞を受賞した。この作品は今年国内再演と米国ツアーを行う。