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ごく普通に考えれば、第一回だから主催者の関連団体――この場合は劇団昴ということになるが、あえてそれを避けてのプログラミングで、これはちょっと憎いばかりの配慮だった。加えて韓国は劇団自由、中国は中央実験話劇院の参加である。つまり、それぞれ国を代表する集団が選ばれていて、実際にフェスティバルに接すると、それだけのことはあったと納得出来た。わけてもいまだに耳に残っているのは、劇団自由の『母という名の女』の主演者、朴正子の歌った「アリラン」である。わが国でもよく知られるこの民謡を、朴正子はドラマのコンテクストに沿って、韓国の地方によってはこう違うと、いくつかの歌い方を披露した。それが朝鮮戦争を背景にした母の物語を、より深いところでわれわれに訴えてきたのである。心に染み入るような、魂を揺さぶられるごとき「アリラン」を、わたしははじめて聞いた。

二回目の今年のレパートリーも、なかなかのものだと感じ入る。日本をはじめ、イギリス、マレーシア、南アフリカの舞台が並ぶ。わけても注目されるのは、南アフリカのそれだろう。この国のストレート・プレイがライブで紹介されるのは、これがはじめてだと思われるからである。

いうまでもなく、国際交流の基本的な要点の一つは、知らないものを知る機会を得ることである。その意味で、このフェスティバルは、しっかりと国際交流の原点に立っている。この姿勢を保持してくれれば、フェスティバルの可能性は無限だといっても過言ではない。

 

 

 

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